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融資審査に「心理統計テスト」活用、AIアルゴリズムでマイクロファイナンスの新たな地平へ

ニューズウィーク日本版 / 2023年11月24日 11時30分

2019年、2人はマレーシアのクアラルンプールで会社を立ち上げた。「マレーシアを拠点に選んだ理由は、インターネットの普及率が約99%、スマートフォンの普及率が約90%と、デジタルビジネスを展開するのに非常に適した環境があることです。人口は約3,300万で、若い世代も多い。国がそれほど大きすぎず、小さくもないという点も丁度良かったのです」

稲田氏(中央)とスタッフたち(マレーシアで)

ビー・インフォマティカが打開しようとしている課題のひとつは、新興国では多くの人がクレジットスコア(個人や法人の信用力を評価するための数値)を持っていないということだ。「その点が日本のような先進国とは異なります。日本ではほとんどの人がクレジットスコアを持っている。学生を含めて、たいていの人がクレジットカードを所有しているからです」

小規模事業者や、1人で経営しているような零細起業家を対象に、同社は1万リンギット(約2,150ドル)から融資を行う。クレジットスコアを持たない人がいるという点については、地元のスタートアップ企業が開発した心理統計テストが解決策となった。このテストでは、48の質問によって性格と行動面の3つの分野を分析する。起業家精神、金融リテラシー、そしてコンプライアンス(金融ルールを守ろうとする意識)だ。それらをもとに、貸した資金が返済される可能性を割り出す。

1万件のデータ収集を目指す

アルゴリズムに新しいデータを投入すれば、予測精度は向上する。しかしマレーシアで行った融資は100件に満たず、現実の事例は多くはない。より多くのデータを収集するためもあって、それまでマレーシアを拠点としていたビー・インフォマティカは2020年、東京本社を設立した。

オリックス銀行など日本の金融機関と協力し、今後さらに数千件のデータを取得する。「最低でも5,000件を目標としていますが、統計的に信頼できるレベルとしては1万件が理想です」と、稲田氏は言う。

アルゴリズムが軌道に乗れば、それを金融機関に、さらには他分野に提供することで商業化を目指す。同社が検討している事案のひとつは、賃貸物件の入居者の信用度を評価するアルゴリズムをつくることだ。

多くのスタートアップと同じく、現時点ではビー・インフォマティカは最低限の収入しか得ていない。補助金や投資家の支援を得ながら、収益化する体制づくりを目指している。そのような状況での、東京金融賞の受賞はうれしいニュースだった。

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