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気象予報AIはスパコンの天気予報より優秀? Google関連会社の10日間予報が精度とスピードで圧倒

ニューズウィーク日本版 / 2023年11月24日 15時55分

50年代は、各国で急速にコンピューターによる数値天気予報の導入が進みました。54年に世界で初めてスウェーデンで業務として数値天気予報が行われると、55年にはアメリカ、59年には日本と旧ソ連でも始まりました。

このとき気象庁で使用したIBM704は、日本の官公庁に初めて導入された大型汎用電子式コンピューターです。59年の日本気象学会では「人間が卓上計算機を使うと63日9時間48分44秒かかる数値計算は、IBM704ならば2分22秒でできる推定だ。とすれば、48時間予報は2時間7分50秒で計算できる」との報告がありました。

もっとも、当初の数値天気予報は精度が低く、あまり当たりませんでした。計算処理能力の問題で格子を細かくすることができず、従来の物理方程式にプラスする条件付けの部分(〇〇という条件のときはこの数値を掛け合わせる、など)がそれほどうまくは設定できなかったからです。

コンピューターの性能が上がり、地球物理学が進歩するにつれ、研究者たちは計算に使うデータを全地球規模に広げ、格子を細かくしていき、基本となる物理方程式と条件付けが適切になるように「気象の数値シミュレーション(気象モデル)」に改善を加えていきました。それとともに、気象モデルを実践的に使った数値天気予報の精度は高まっていきました。

比較検証で分かったAI気象予報モデルの強み

今回、Google DeepMindの研究チームは、新興勢力の機械学習によるAI気象予報モデル「GraphCast」が、60年以上の歴史を持つパソコンによる数値シミュレーションモデルに匹敵するのかを調べました。比較対象は、欧州中期気象予報センターが運用する世界最高クラスの高分解能大気予測モデル「HRES」です。

GraphCast は数値天気予報とは異なり、物理方程式の変わりに過去40年の気象データをベースに、因果関係(〇〇という状態であれば、次に××になる)に基づいてトレーニングされています。

新たに天気予報をするときは、6時間前の天気と現在の天気の状態の2セットのデータをもとに、6時間後の天気を予測します。このプロセスを繰り返すことで最大10日間の中期天気予報まで可能となっています。

10日間の予報を比較検証した結果、気温、平均海面気圧、湿度、風速、風向などの地表面と大気の状態を示すテスト変数1380個のうち約90%でGraphCastはHRESの予報を上回ることができました。さらに評価を天気予報で最も重要な対流圏近傍(地上6~20キロメートル)の大気に限定すると、AIの予測は99.7%でHRESを上回りました。

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