まるでスパイ映画、台湾軍人に米チヌーク・ヘリを盗ませて中国空母に着艦させる計画が露見
ニューズウィーク日本版 / 2023年12月13日 16時0分
<今回の計画の大胆さを受けて台湾国防部は、「中国共産党の諜報活動は必死さを増しており、潜入の手段や手法がますます多様になっている」と警戒を強めている>
<動画>飛行機も持ち上げる「野獣」チヌークの怪力
台湾の地元誌が12月11日に報じたところによると、同国の防諜組織は、台湾から中国に亡命しようとしていた台湾軍のパイロットを捕まえた。このパイロットは、中国のスパイから、1500万ドル(約22億円)と引き換えに台湾軍が持つ米国製の大型輸送ヘリコプター「CH-47チヌーク」ごと亡命するようそそのかされたという。
台湾の中国語メディア「CTWANT」によれば、この台湾軍中佐は、台湾海峡を航行する中国海軍の空母「山東」にチヌークで着艦できれば、1500万ドルと本人および家族の安全と中国への亡命を認める、ともちかけられていたという。
台湾国防部(国防省)は、報道の詳細に対するコメントを拒んだが、12月11日に出した声明のなかで、逮捕のきっかけは「内部通報」だったと述べた。
「この事件による被害を最小限に抑えるための対策をとっている」と国防部は述べる。「中国共産党の諜報活動は必死さを増しており、潜入の手段や手法がますます多様になっている」
無謀な着艦計画
問題の中佐は2023年6月、タイのバンコクを訪れ、人民解放軍のために働くスパイを名乗る中国人と面会した、とCTWANTは伝えている。
当初、中国側が提示した報奨金は「毎月20万台湾ドル(約92万円)」と低く、家族全員のタイ華僑ビザと、台湾有事の場合の優先避難の保証だけだった。
中佐は拒絶したが、中国側が報奨金をチヌークの値段の半分(1500万ドル)まで引き上げ、空母を台湾本島から24海里(約44キロ)まで接近させることに同意したため、考えを変えたという。
米海軍はチヌークを空母に着艦させたことがあるが、中国で同じような大きさのヘリコプターの着艦に成功した記録はない。そもそも、中国空母が台湾本島にそこまで接近しようとすれば台湾軍が黙っていないはずだと、台北の防衛アナリストは報道内容の一部に疑問を呈した。
台湾の邱国正・国防部長(国防相)は11日、立法院(国会)で、「こうした事件が発覚したことに、私も心を痛めている。関係したとされる者には、法に従って処分しなければならない」と発言した。
台湾立法院(立法府)は、問題の中佐や、交渉を仲介した者について、可能なかぎりの厳罰に処すことを求めている。検察は、同様の事件を防ぐには重罰が必要だと述べている。
(翻訳:ガリレオ)
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アディル・ブラール
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