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「プレスリーの彼女だった」...歌手だった叔母が語ってくれたロックの王者「エル」との恋の思い出

ニューズウィーク日本版 / 2023年12月22日 15時10分

エル(叔母はエルビスのことをそう呼んだ)とキャロリンは離れられない仲になった。一緒に巡業に出て、歌い、時間を過ごした。

「すごく見たい映画があって、2人で映画館へ行ったことがある。でも、彼はじっと座っていられなかった。休むことを知らないエネルギーの塊で、いつも動いていた。結局、映画館を出たけれど、普段は礼儀正しくて愛情深くて、最高のデート相手だった。それに、キスがとても上手だった」

ある晩、『ヘイライド』の会場で彼の両親にも会ったが、自分のことが伝わっていないのはすぐに分かった。母親のグラディスは無口で無愛想、父親のバーノンは上の空で握手をして、圧倒された様子で舞台を見回していた。

2人に幸せな未来が待っているとは思えない出来事だった。さらに、ほかの女性たちとの噂もあった。

プレスリーに関する著書を4作発表しているジャーナリストのアランナ・ナッシュは、その1作でキャロリンを取り上げている。

「54年当時、エルビスは地元地域で人気になり始めたばかりだったが、風変りな外見とステージ上で発する魅力に女性たちは既に夢中だった」と、ナッシュは話してくれた。

「彼が最も興味を持っていたのがキャロリンだ。処女性、美人コンテストの女王、陶器人形のような顔をした褐色の髪の小柄な女性──エルビスが抱く3つの理想像を体現していた。正式に交際しようとキャロリンに伝えていたが、エルビスは大空を駆け抜ける彗星で、どんな女性も引きとどめることはできなかった」

ほかの女性たちについてキャロリンは問いただしたりしなかったが、傷ついていたことに変わりはない。

「別れましょうって言って、別れたわけじゃない。エルはいつもツアーに出ていて、いなかった」と、叔母は振り返る。

「彼が『エド・サリバン・ショー』に出演したすぐ後、私は(カントリー歌手の)ジョニー・ホートンと一緒にコンサートをしたんだけど、観客は6人だけだった。近くでエルの公演があって、誰もがそっちに行っていたの」

「だから、観客に返金して、私たちもエルビスを見に行った。楽屋を訪れたら、彼は女性に囲まれていた。注意を引こうとしたけど、とにかくすごい人だかりで。彼に会ったのはそれが最後だった」

それでも、叔母にとってはいい思い出だ。本当のエルは気立てのいい「カントリーボーイ」だった、と。

2023年の夏、叔母と私はバージニア州を巡るドライブ旅行をした。86歳の今も、キャロリンは冒険が大好きだ。

旅の途中、エルビスたちと巡業をした日々を振り返って、叔母は言った。「出発するときに、彼らを待たせたことはない。一緒にツアーできるのがうれしくて、大抵は誰よりも先に荷造りができていた」

「ショービジネスの世界には、こういう格言がある。『別れるときは笑顔で』って」

エルビスが歌う「Can't Help Falling In Love」

Elvis Presley - Can't Help Falling In Love ('68 Comeback Special)/Elvis Presley

  

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