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これでは日本は国際的サプライチェーンから「外される」...不十分な脱炭素政策に、企業などで強まる危機感

ニューズウィーク日本版 / 2024年1月5日 16時22分

EU ETSの導入で、主な対象部門である発電・熱供給とエネルギー集約型産業で排出量は大幅に削減された。「多くの米政治家は炭素価格の導入が消費者の負担するコストを押し上げ、反動を引き起こすのではないかと懸念している。しかし驚くべきことに炭素価格は富める国にも貧しい国にも広がっている」と同誌は報告している。

二酸化炭素換算で年間6億2000万トンを排出する世界9位の排出大国インドネシアでも排出量取引制度を導入し、炭素市場を立ち上げる際、炭素取引のハブになる夢をぶち上げた。地元銀行は地熱エネルギー会社のクレジットを買い取った。23年初頭には世界の排出量の23%に炭素価格が適用された。10年のわずか5%から急拡大していると同誌は指摘する。

日本メーカーは再エネがないと輸出できなくなってしまう

国際通貨基金(IMF)によると、50カ国近い先進・新興市場が炭素価格制度を導入しており、さらに20カ国以上が導入を検討中だ。EUによる炭素国境調整メカニズムの移行期間が10月1日に始まった。炭素国境調整メカニズムはEU ETSに基づき域内の製造事業者に課されるのと同等の炭素価格をEU域外から輸入される対象製品に課す仕組みだ。

「カーボンプライシングにはドミノ効果がある。輸出国の政府にも国内企業が海外で関税を支払うのではなく自国で炭素価格を支払うインセンティブが働く。問題はドミノ倒しが十分に迅速に行われるかどうかだ。将来の政策立案者は気候変動の影響を最小限に抑えたいのであれば、対策をさらに強力なものにするしかない」(エコノミスト誌)

自然エネルギーを促進する日本の自然エネルギー財団(孫正義会長)シニアコーディネーター、高瀬香絵氏は「世界で戦っている製造業は日本国内の再エネがないと輸出できなくなってしまう恐れがある。その中で排出量の多い石炭を保とうとするインセンティブはいったいどこから来るのか。日本には浪費する時間もお金もない」と筆者に語る。

「2000年代、日本はエネルギー安全保障のため国内に石炭火力発電所をたくさん新設した。石炭火力を残すためアンモニア混焼という技術に莫大なお金を出している。それでは排出削減措置を講じたことにはならない。アンモニアや水素の100%燃焼にするのか。それより再エネの方が安上がりだ。移行ボンドを利用して再エネと脱石炭を進めるべきだ」

「政府は“伝統的な声”に耳を傾け過ぎ」

「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」は「排出削減措置が講じられていない(unabated)」の定義について「発電所から排出される二酸化炭素の90%以上を回収あるいはエネルギー供給から排出されるメタンの50~80%を回収」と例示しており、高瀬氏は「日本独自の解釈は許されない。90%回収がスタンダードになる」と強調した。

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