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戦争の準備か、ウクライナ戦争の余波か...中国軍を大粛清した習近平の真意は?

ニューズウィーク日本版 / 2024年1月9日 14時20分

習近平 REUTERS/Thomas Peter/File Photo

<核兵器を担当するロケット軍幹部ら9人を解任>

中国共産党は、ある慣行を実施して2023年を終えた。粛清だ。今回標的となったのは中国軍で、12月29日、国会に相当する全国人民代表大会(全人代)で軍高官9人の代表資格が取り消された。

全人代自体は形式的なものだが、こうした解任はさらなる処分や刑事告発につながることが多い。今回の粛清には、人民解放軍で核ミサイルの管理・運用に当たる「ロケット軍」の複数の高官が含まれており、同軍は昨年夏から調査されている。李尚福(リー・シャンフー)前国防相も、公の場から姿を消してから数カ月がたった10 月に正式に解任されたが、解任理由はいまだ発表されていない。

西側のタカ派の間では、中国における軍の粛清は全て戦争の準備とみる向きもある。抽象的な意味ではそうかもしれない。軍の役割は戦争に備えることであり、中国の指導部は腐敗を軍の即応性に対する脅威と考えている。しかし、今回の粛清は特定の紛争に対する備えを意味するものではない。軍の粛清は独裁支配の特徴であり、特に共産主義国家では政権が軍に対する優位性を主張しようとする。

中国が軍内部の汚職を管理する必要があることは以前から明白で、しばしば明言されてきた。軍高官は長年汚職に手を染め、文化大革命の混乱の中で軍が経済の大部分を掌握した1970年代以降、その傾向が顕著になった。

12年に党総書記に就任して以来、習近平(シー・チンピン)は汚職の取り締まりを強めてきた。14年には、癌で死期が迫っていた軍高官を拘束し、党から追放した。習は粛清の必要性について、長期的には台湾をめぐる紛争に備えるためだと考えているかもしれない。だが短期的には軍という重要な組織を自ら支配するためだ。

結局汚職はなくならない

ロケット軍に汚職があったのなら、どんな汚職で、関与した人物はなぜ摘発されたのか。1つの可能性は、彼らが中国の不動産市場低迷の何らかのあおりを受けたことだ。あるいはもっと直接的な理由かもしれない。中国は核兵器増強のため国内西部の土地を大量に取得しており、それが汚職の温床になった可能性だ。

不動産と政府資金の組み合わせは、汚職の機会を多く生んできた。役人が地方政府から土地を接収したり、安く購入したりする口実があれば、民間利用のためにそれを売却し、多額の利益を得ることができる。

兵器開発と兵站(へいたん)も汚職が起きやすい分野だ。中国は、ロシアの対ウクライナ戦争を注視してきた。中国の予想に反して22年にロシアが侵攻に失敗した理由の1つは、小規模な腐敗が蔓延していたことで、古くなった食料やタイヤが部隊に供給されるなどした。そのため、中国指導部はロケット軍の物資調達と兵站に目を光らせ、汚職の発覚につながった可能性もある。

どのような計画であれ、中国の汚職撲滅運動が長期的にロケット軍の作戦に大きく影響することはない。結局、どれだけ取り締まりをしても腐敗の問題はなくならない。軍を事実上監督できる唯一の機関は中国共産党だが、党は軍よりも透明性が低いからだ。

22年に中国の国策半導体ファンドをめぐる汚職で幹部を摘発したときと同じように、中国の核近代化に投資された資金は、しばらくの間、行き場を失うかもしれない。

From Foreign Policy Magazine



ジェームズ・パーマー(フォーリン・ポリシー誌副編集)

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