知的人材と資本の流出が止まらない...すでに「経済戦争」では敗戦状態のロシア【最新経済データ】
ニューズウィーク日本版 / 2024年1月10日 13時55分
■資本流出
ロシア中央銀行の報告書にあるように、22年2月~23年6月までにロシアから引き揚げられた民間資本は計2530億ドル。それ以前の資本流出額の4倍以上だ。試算によれば、ロシア在住の富豪の数は33%減少した。
■欧米の技術・ノウハウの喪失
この現象はテクノロジーや資源探査など、幅広い基幹産業で起きている。石油大手ロスネフチだけを見ても、同社の公開資料によれば、昨年末までの1年間の設備投資は100億ドル近く増大。
原油1バレルを輸出するごとに、およそ10ドルの追加経費がかかる計算だ。さらに、同社の北極圏の油田開発計画も、欧米の技術や専門知識に頼り切っていたため継続が危ぶまれている。
■外国直接投資(FDI)の停止
複数の措置によって、ロシアへのFDIはほぼ完全に止まっている。ウクライナ戦争以前、年間FDI額は約1000億ドルに達していたが、侵攻開始から昨年12月までの各月のうち、流入超過を記録したのはひと月だけだった。
■ルーブルの通貨交換性の喪失
多国籍企業の大量撤退ではばかるものがなくなったプーチンは、通貨ルーブルに厳しい資本規制を導入した。ロシア市民による外国銀行口座への送金を禁止し、ドル預金口座からの資金引き出しを最大1万ドルに制限。
輸出企業に獲得外貨の8割をルーブルに両替することを義務付け、ルーブル口座を持つ個人へのドル直接交換、およびドル建て融資やロシアの銀行によるドル販売を停止した。
ルーブル取引高が90%減少したのも、これでは当然だ。ルーブル資産はグローバル市場で無価値に等しくなり、交換不能になっている。
■資本市場へのアクセスの喪失
企業にとって欧米の資本市場は今も、最も深度があって流動性が高く、安価な資金源だ。ウクライナ侵攻以来、欧米金融市場で株式・社債を新規発行できたロシア企業はゼロ。
つまり、もはやロシア企業は、高利で融資する国有銀行(指標金利は16%)など、国内の資金提供源を当てにするしかない。多国籍企業撤退で、ロシアのベンチャー企業は資金調達の選択肢を奪われ、国際的投資家に出資を求めることも不可能になった。
■富の大破壊と資産評価の急落
グローバル多国籍企業の大量撤退が一因で、ロシアでは、あらゆる分野で資産評価が急激に落ち込んでいる。筆者らの調べによれば、国有企業の企業価値はウクライナ戦争以前と比べて75%低下。NYTが指摘したように、多くの民間部門の資産価値は50%目減りしている。
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