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「違法な取り立て」に心折れ、自殺者も...富士通のシステムが招いた巨大「冤罪」事件に英国民の怒りが沸騰

ニューズウィーク日本版 / 2024年1月10日 18時7分

グリフィス氏ら少なくとも4人が自殺した。これまでに覆った有罪判決はわずか93件だ。「彼らが行ったことを(ドラマで)視て誰もがショックを受けている。実際にそれを見たり、またその話を聞いたりすれば、いかにひどい誤審だったかが分かる。今こそ、無実の元民間郵便局長らに正義がもたらされることが重要だ」とスナク首相は話した。

ケビン・ホリンレイク英企業・市場・中小企業担当閣外相はX(旧ツイッター)に「すでに分かっている被害者全員が最高16万8000ポンドの暫定的な支払いを受け、スキームの対象者の100%が提示を受け、80%以上が受諾している。すでに分かっている被害者の64%が完全和解を受諾したが、さらに多くのことを行うため日夜努力している」と投稿した。

富士通の技術者が端末から民間郵便局長の口座を操作

全国民間郵便局長連盟幹部マイケル・ルドキン氏は08年8月、富士通英国のオフィスを訪れ、ホライズン担当の技術者が端末から民間郵便局長の口座を操作するデモンストレーションを目撃した。その翌日、4万4000ポンドの現金不足が見つかったとポストオフィスの抜き打ち検査を受けた。妻のスーザンさんは不正会計罪で起訴され、有罪判決を受けた。

ホリンレイク氏は8日、下院で富士通について「このスキャンダルに責任があると証明された者は被害者救済のためのすべての支払いについて義務を負うべきだ」と答弁した。最初から完全無欠なIT(情報技術)システムなど存在しない。バグや欠陥を見つけて、そのたび更新するのが当たり前だが、ポストオフィスは「ホライズンに欠陥はない」と起訴を続けた。

12~19年にかけてポストオフィスの最高経営責任者(CEO)を務め、サービスの近代化と合理化を進めたポーラ・ヴェネルズ氏について、100万人以上の人々が大英帝国勲章のコマンダー(CBE)を剥奪するよう署名活動を展開。恥知らずのヴェネルズ氏も世論の批判にさらされ、CBEの返上をチャールズ国王に申し出た。

受章の理由は「ポストオフィスへの貢献と慈善活動」だった。

ポストオフィスと富士通は負担すべき開発コストを馬鹿正直な民間郵便局長に押し付けた。最初から局長を犯罪者扱いし、ポストオフィスの捜査権と公訴権を乱用して不法な取り立てが行われた。弁護士費用がべらぼうに高い英国では社会的弱者は泣き寝入りするしかない。主犯はホライズンを運用したポストオフィスだが、富士通はどこまで責任を負うべきなのか。

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