【マップ】台湾はなぜ世界的に重要な戦略的要衝なのか
ニューズウィーク日本版 / 2024年1月15日 15時38分
<喜望峰やスエズ運河をも凌駕する船が台湾周辺を行き来しており、台湾有事となれば世界のGDPの10%が失われる>
総統選挙を終えたばかりの台湾周辺の海上交通地図が、世界貿易における台湾の重要性を浮き彫りにしている。
オープンソースの船舶追跡サイトであるマリン・トラフィックで、直近の1年分のデータである2022年の状況を見れば、膨大な数の船舶が台湾周辺を行き交っていたことがわかる。地図上の色が濃いエリアほど、航路が密集している。
台湾は、製造大国である中国、日本、韓国に原材料を供給する航路の中心に位置する。この3カ国は2019年、世界の製造業生産高の40%近くを占めていた。米海軍協会による2023年11月報告書によれば、2022年、世界のコンテナ船5400隻のほぼ半数が台湾海峡を通過した。
もう1セットの画像は、2024年1月12日時点のリアルタイム海上交通だ。台湾周辺の船舶密度に比べると、アフリカの喜望峰、さらには、世界で最も交通量が多い航路の一つであるスエズ運河さえも、船舶がまばらに見える。
<台湾周辺>
MARINE PACIFIC
<アフリカ喜望峰>
MARINE PACIFIC
<オマーン湾、紅海、スエズ運河>
MARINE PACIFIC
台湾は、戦略的に重要な位置にあるだけでなく、卓越したチップメーカーとして半導体供給の中心的な役割も担っている。台湾では、世界の先端半導体の90%以上が製造されている。
ジョー・バイデン米政権の高官は1月11日、台湾総統選挙を前にした記者会見で、「台湾海峡の平和と安定が損なわれたら、世界経済に深刻な影響を与え、その結果、世界各国の経済に影響が及ぶだろう」と説明した。
1月13日に行われた台湾総統選挙では、「台湾独立」を志向すると言われる民主進歩党が勝利、中国は反発している。もし兵力数と船舶数で世界最大の陸海軍を誇る中国と戦争になれば、世界の貿易が混乱に陥るだろう。
ブルームバーグの最新分析では、そのような戦争が現実になれば、世界経済は10兆ドル規模の打撃を受け、世界のGDPは10%縮小すると予測されている。
台湾の安全保障において主要な役割を果たすアメリカは、台湾の民主主義と戦略的重要性を繰り返し支持してきた。
前述の米政権高官は記者会見で、「アメリカは、台湾の民主的プロセスに全幅の信頼を置いる」と述べた。
アメリカ政府は1979年、国家の承認を台湾から中国に切り替えたが、台湾と事実上の外交関係をもち、武器売却もして中国をいら立たせてきた。
しかし、米国はまた、台湾が公式に独立を宣言しない現状を支持し続けている。台湾が独立を宣言すれば戦争に突入すると、中国は警告している。
台湾の蔡英文総統は、台湾はすでに独立しているため、改めて独立を宣言をする必要はない、という論法を使ってきた。
(翻訳:ガリレオ)
マイカ・マッカーシー
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