アメリカの二次制裁発動で中国国有銀行もロシアとの取引を見直し
ニューズウィーク日本版 / 2024年1月18日 18時29分
<「中国はロシアのエネルギーや鉱物資源を爆買いし、メイド・イン・チャイナでロシア市場を席巻しようとしている。しかしロシアへの直接投資は微々たるもの」 いつでも逃げられる>
経済的な孤立を深めるロシアから、いよいよ中国企業も手を引き始める兆しが見えてきた。
中国の国有銀行がロシアの顧客のデューディリジェンス(リスク評価)を厳格化する方針を示したと、ブルームバーグが1月16日に伝えた。米政府が打ち出したロシアに対する二次制裁(ロシアと取引した第3国企業などへの制裁)の対象になることを警戒して、融資案件等の審査強化に踏み切ったとみられる。
ここ数週間に少なくとも2行の中国の銀行が、融資や決済支援などロシアの顧客との取引を見直し、米政府の制裁リストに載った顧客との取引を中止する方針を示した。関係者によれば、この2行はまた、ロシアの軍事部門に対する金融サービスを打ち切り、またロシアで事業を行うか、第3国を介してロシアに重要物資を輸出している企業との取引も見直す意向だという。
こうした動きは、米財務省が昨年12月、外国の金融機関に二次制裁を科す方針を発表したことを受けたもの。今後は、ロシアが兵器や軍用品を輸入する際の決済を行うなど、ロシアのウクライナ侵攻に加担したと見なされた金融機関も制裁対象となる。
ロシアのドミトリー・ペスコフ大統領府報道官は、これについて関係企業にとっては非常に慎重に対処すべき問題だが、ロシア政府が関知する事柄ではないと述べた。「われわれは引き続き中国との関係強化に務める。中国はロシアにとって極めて重要な戦略的パートナーだ」
西側の穴を埋めた中国
2022年2月24日にロシアがウクライナ侵攻を開始すると、西側の銀行はロシアの金融部門から撤退。その穴を埋めるように中国の銀行が参入した。中国の金融支援がなければ、ロシア経済は今よりはるかに弱体化していたはずだ。中国のロシア産石炭の輸入量は2020年以降2倍以上増え、今や中国はロシア産化石燃料の世界最大の輸入国となっている。
頼みの中国に見捨てられたら、ロシアとプーチン政権はたちまち窮地に陥るが、その危険性は否めない。中国の指導層はウクライナ侵攻開始後もロシアと親密な関係を保ってきたが、伝えられるように国有銀行が二次制裁に神経を尖らしているとすれば、習政権もロシア寄りの姿勢がもたらす経済的コストを警戒し始めた、ということだ。
と同時に、この動きはウクライナ侵攻開始直後から中国が見せていたどっちつかずの態度を改めて示している。中国政府はロシアのウラジーミル・プーチン大統領に外交上の支援を提供し、2国間貿易の拡大を約束しつつも、ウクライナ侵攻を全面的に支持することは避け、軍事援助も渋ってきた。
だが経済面では、西側の制裁でジリ貧になったロシアが頼りにしたのは中国だ。ロシアの中央銀行は外貨準備のおよそ半分を凍結され、金(ゴールド)か人民元に頼らざるを得なくなった。また侵攻後、ロシアではビザとマスターカードが事業を停止したため、ロシアの民間銀行は代わりに中国の銀聯カードを発行するようになった。
ロシアのコンサルティング会社マクロ・アドバイザリーのCEOで、ロシア経済の権威として知られるクリストファー・ウィーファーは以前本誌の取材で、ロシアは対中依存を深めることに慎重になるべきだと警告した。
「中国はエネルギーや鉱物資源を爆買いし、メイド・イン・チャイナでロシア市場を席巻しようとしている。しかしロシアへの直接投資は微々たるものだ。ロシアから大脱出した西側資本の穴を埋めるには、とうてい足りはしない」
ジュリア・カーボナロ
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