首相への好悪から見る「分極化の起点」
ニューズウィーク日本版 / 2024年2月2日 17時0分
「保守」と「リベラル」のイデオロギーによる首相への好悪
SMPP調査では、有権者が抱く政治についての考えを、「リベラル」(0)から「保守」(10)までの11点尺度で尋ねている。その11点尺度毎に各首相への好き嫌いの平均値を求めて、グラフにしたのが、図2である。グラフの中に2つの変数の直線的な関係の強さを表す相関係数(r)も参考のために掲載している。視覚に基づいた解釈には注意が必要だが、「リベラル」や「保守」という考えに沿って好き嫌いが分かれる首相と、関連がはっきりしない首相がいるように見える。
2000年代に首相を務めた小泉や福田は中間的立場の有権者から好かれ、両端の有権者からは嫌われる傾向がある。民主党政権の3首相については、何故か「リベラル」寄りの2点の位置でそれぞれ一番好かれている。相関係数を手がかりにすると、菅直人(-0.20)に対する好き嫌いが3人の中ではイデオロギーとの関係が強いようである。
それに対して、第2次安倍政権の主要閣僚の安倍、麻生、菅の3人、中でも安倍はグラフの形状から見る限り、「保守」から好かれ「リベラル」から嫌われるという関係がはっきりしている。特に安倍は、「リベラル」側から「保守」側に移動するに連れて、好感度が上がっていくことが明確である。
図2
首相への好き嫌いから与野党への好き嫌いへ
国会において多数を占めた政党により首相は選ばれるので、首相に対する好き嫌いと与党に対する好き嫌いが強く関連するのは当然である。ただし、首相に好感を抱く有権者が常に野党を嫌う訳ではない。SMPP調査では、首相に対する好き嫌いを尋ねるのと全く同じ形式で、各政党についての好き嫌いを尋ねている。便宜上、11点尺度で測定した首相の好き嫌いを「とても好き」(10、9)、「好き」(8、7、6)、「中立」(5)、「嫌い」(4、3、2)、「とても嫌い」(1、0)の5つに分けたうえで、各グループについて政党に対する好き嫌い尺度の平均値を計算した。
ここでは、小泉、野田佳彦、安倍、そして岸田の4人について、自民党と立憲民主党に対する好き嫌いの尺度のグラフを図3として掲載する。自民党に対する好き嫌いは青、立憲民主党に対する好き嫌いは緑のグラフであるが、左側に与党、右側に野党が配置されるように、野田だけはグラフの左右を入れ替えている。
小泉については、好感度が上がるほど自民党に対する好感度も立憲民主党に対する好感度も上がっているが、それは小泉が超党派的な人気を誇ったことの現れだろう。
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