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米大統領選、トランプは「黒人票」で勝利へ──黒人層が「バイデンはオバマになれない」と失望したワケ

ニューズウィーク日本版 / 2024年1月24日 12時32分

「インフレ率は下がったが、今でも黒人男性は食品など生活必需品の価格高止まりに不満を抱いている」とベリーは言う。「中小企業の経営者にも、トランプ政権時代のほうが連邦政府からの融資を受けやすかったという人がいる」。かつての「黒人の命も大事だ」のような運動も風化し、今はその反動もあるという。

黒人女性はどうか。「中高年の黒人女性は、バイデンも最悪だけれど、トランプとの究極の選択ならましなほうを選ぶだろう」とベリー教授は続けた。「でも私の知る限り、バイデン再選を熱望する人は皆無。経済の見通しや黒人の権利問題で想定外のポジティブな変化がない限り、みんな投票所へ行く気になれない」

黒人の投票率が下がればトランプに有利だ、と言ったのは英サリー大学のマーク・シャナハン准教授(政治学)。

「バイデンはオバマになれない」「誰も熱狂しない」

「バイデンはオバマになれない」と彼は言う。「バイデンには誰も熱狂しない。それに彼は大統領就任以降、アフリカ系アメリカ人の社会に対して、ほとんど何もしてこなかった。そうであれば、わざわざ投票に行く理由がない」

マッチョなトランプを熱烈に支持する黒人男性がいても、そこはトランプ復権に拒否反応を示す黒人女性と相殺されるだろうが、とシャナハンは言い、こう続けた。

「多くの黒人有権者が棄権を選べば、今度の選挙では共和党に追い風となる。逆に全体の投票率が高ければ、激戦州ではバイデンが競り勝つ可能性が高まる。だからバイデンとしては、経済的に苦しい有権者にもっと手を差し延べなければならない。貧困にあえぐ黒人有権者は、そういう候補者を求めている。トランプは白人にアメリカン・ドリームを売り込めばいいが、バイデンは全てのアメリカ人に売り込まねばならない」

世論調査の数字を見て、トランプ陣営は黒人票の掘り起こしに力を入れている。「アフリカ系アメリカ人のコミュニティーに対する最強の働きかけ」をしていると、トランプ陣営の選挙参謀ジェイソン・ミラーはブルームバーグに語っている。

一方、民主党は黒人有権者のバイデン離れに危機感を強めている。「まだ黒人有権者の動員を諦めてはいない」と、自身も黒人であり、民主党全国委員会を率いるジェイミー・ハリソンは英紙ガーディアンに語っている。「私たち黒人が民主党を支持するのは当然と言われ、投票日に駆り出されるだけの存在だとしたら、やりきれない。その思いは分かる」

ちなみに本誌の分析では、もしも今すぐ大統領選の投票が行われ、トランプとバイデンの対決であった場合、トランプは選挙人538人のうち少なくとも285人を獲得し、当選に必要な過半数を優に上回ることになる。

ケイト・プラマー


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