NATOがウクライナの砲弾共同調達に調印、でも全部届くのは2027年! 本当に弾尽きるウクライナ軍
ニューズウィーク日本版 / 2024年1月24日 15時6分
<今回調印した作りの単純な砲弾さえロシアを圧倒するほどの数は作れない。ましてスマート(誘導)弾となれば難しい>
NATOがこのほど発表した新たな合意のもと、ウクライナ軍向けの砲弾が生産されることが明らかになった。ただし、実際の納品までには、最長で3年を要する可能性があるという。
NATOは1月23日、数十万個単位の155ミリ砲弾を生産する、11億ユーロ(12億ドル)規模の契約を結んだと発表した。この契約によって生産される砲弾の数は22万発ほどになる可能性が高い。
NATO加盟国を代表して、NATO支援調達庁(NSPA)が締結したこの契約に基づいて生産される砲弾は、ウクライナに送られるか、加盟国それぞれが自らの軍備としてストックすることになる。
NATOのイェンス・ストルテンベルグ事務総長は、ブリュッセルにあるNATO本部で記者団に対し、ロシアが始めたこの戦争は、「弾薬の物量戦になっている」と述べた。ただし、ウクライナ軍の部隊が実際にこの砲弾を使用できるまでには、かなりの時間がかかりそうだ。。
ストルテンベルグが記者会見をおこなったのち、NSPAのステイシー・カミングス長官は、今回の合意によって、155ミリ砲弾を各国に供給することが可能になると説明したうえで、「本日発注された分について、納品までに要する時間は24から36カ月だ」と述べた。
NATO関係者はロイター通信に対し、第1弾の納品は2025年末までに実施される可能性があると述べたものの、1月23日に明らかにされた納期を見る限り、一部の砲弾は、2027年までウクライナには届かないとみられる。
アメリカもEUも膠着
ロシアのウクライナへの侵攻からほぼ2年、ウクライナ政府は弾薬不足について不満を訴えている。アメリカおよび欧州連合(EU)での交渉が膠着状態に陥っている現状では、さらなる軍事支援で合意する前に、弾薬が尽きてしまうおそれがある、と同国は懸念している。
ヨーロッパ外交評議会(ECFR)の上級研究員グスターブ・グレッセルは1月、本誌の取材に対し、2024年におけるウクライナ政府の懸念事項は、「作りの単純な作りの砲弾や臼砲弾についてさえ、ウクライナが火器でロシアを圧倒できるほどの生産増強が行われていない点にある」と指摘した。
「われわれが以前ウクライナに送ったスマート弾(誘導弾)にいたっては、サプライチェーンや生産に多くの問題を抱えており、まだ解決できていない」と、グレッセルは述べていた。
「複雑な弾薬になるほど多くの不足が発生している」とグレッセルは付け加えた。そのうえで、防衛産業の生産能力について、「一部の国では増強されているが、していない国もある」と述べた。
EUの推計によると、ロシアは1日あたり2万発以上の砲弾をウクライナに撃ち込んでいる。ウクライナの砲弾発射数は、2023年夏の反転攻撃の期間で1日あたり8000発、直近の数週間では2000発にまで落ち込んでいる。ウクライナ軍で作戦の指揮を執るオレクサンドル・タルナフスキー司令官が12月に明かした数字だ。
EUは2023年3月、ウクライナに対し、合同調達契約と生産能力の増強を通じて、また既存の軍備を切り崩す形で、12カ月にわたって砲弾を供給すると誓約した。だがEUは、2023年内に100万発の砲弾を提供する約束に届かなかった。
(翻訳:ガリレオ)
ブレンダン・コール
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