自閉症の少年と相棒の介助犬「トパーズ」の絆が灯す希望の光
ニューズウィーク日本版 / 2024年1月26日 17時0分
全ての準備が整ったのは昨年3月。その2カ月後、一家はチェイスにとっての「ヒーロー」、トパーズに会うために「わくわくしながら」ジーニアへ向かった。
最大の難関はその後に待っていた。
チェイスが通う学校に、トパーズを受け入れてもらうことだ。
学校に介助犬を同伴する許可を求めて、夫妻はトパーズを連れ帰った直後から活動を始めた。
「特別なニーズのある子の親として、必要な知識を得るには予想もできないほど時間がかかる」と、アシュリーは言う。
「トパーズに関して、学校を含むあらゆる場所でチェイスにどんな権利があるかを知るため、ADA(障害のあるアメリカ人法)を調べ尽くした。簡単に越えられるハードルではなかったが、息子の学業的成功に不可欠なことだった」
電子メールや電話でのやりとり、弁護士との相談を重ね、地元学区当局者と話し合った末に、許可を得たのは昨年7月だ。
チェイスがより自主的に犬をコントロールする方法を身に付けられるよう、学区側が「ファシリテーター」を提供することも決まった。
「関係者全員にとって未知の体験だったが、うれしいことにほとんど問題はなかった。チェイスが自分の感情とうまく付き合いながら適切な教育を受けられるよう、トパーズは学校生活を全力で支えている」と、アシュリーは話す。
トパーズがいる今では、チェイスの体の自由を奪わなければならない事態はずっと少なくなった。
「チェイスがいら立ったときも、トパーズならどんな方法より素早く静められる。私たちの生活はいい方向へ変化している。簡単な道のりだったとは言えないが、それだけのことはあった」
動揺を感じ取る能力も
4ポーズで誕生したトパーズは、同団体が「子犬の幼稚園」と呼ぶパピー・エンリッチメントプログラム(PEP)に早いうちから加わった。
「卒園」後はまず基本的なしつけを受け、公共空間に慣れるトレーニングをした。
広報担当者のクラークによれば、将来的に支える相手の生活様式や特定の障害を見据えて、補助犬は子犬のときから2年間の「厳しい」訓練を受ける。
「トパーズは本当に素晴らしい。チェイスが動揺し始めたのを感じ取ることもできる。そんなときはそばへ走っていって、私たちの指示を待ちながら、チェイスの周りを回ったり軽くつついたりする」と、アシュリーは言う。
「息子と私たち家族の人生が変わる機会に恵まれて、とても幸運だ。4ポーズには感謝してもしきれない。チェイスはトパーズを心から愛していて、トパーズ抜きの外出は許してくれない。たった5分間、家を離れるだけでも」
<本誌2024年1月30日号掲載>
マウラ・ツーリック
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