郵便局事件だけじゃない、知られざるイギリスの冤罪、誤審
ニューズウィーク日本版 / 2024年1月27日 18時53分
郵便局長に南アジア系が多いという事実
もしかすると、もう1つ要因があるかもしれない。彼らが女性だったという点だ。こうした事件で夫が裁判にかけられることは一度もなかった。あからさまに言われていたわけではないから、断言はできない。とはいえ、「いかにも女性ならやりかねない」などとはっきり言う人はいなかったものの、代理ミュンヒハウゼン症候群は圧倒的に女性に多いから、あらゆる女性は「かまってほしい」傾向があるに違いないという先入観がつきまとっていた。
まぎれもなく、ウィンドラッシュ・スキャンダルで被害をこうむったのは黒人たちだ。郵便局スキャンダルも、いくつか疑いが生じる。起訴された郵便局長らは定義上は中産階級の小規模経営者であって「下層民」ではない(そしてほとんどが白人だ)が、かなりの比率で南アジア系の人々(インド系やパキスタン系など)が多い職業でもある。僕は複雑な問題を「人種差別」や「性差別」に単純化して考えないよう慎重を期しているが、それでもこの要素は可能性として排除するべきではないだろう。
目下、郵便局スキャンダルの関連で人々が遠回しに持ち出すもう1つの例が、グレンフェル・タワーだ。ロンドンにあるこの低所得者向け高層公営住宅で2017年に大規模火災が起こり、72人が死亡。被害が大きくなったのは、外壁に可燃性の被覆材が使われていたからだった。事故から6年以上が経過したが、誰一人として何らかの罪に問われた者はいない。一般の人々は、少なくとも犯罪的な過失があったと考えており、リスクを分かっていながら関係企業も地方当局もそれを無視していたと思っている。
無実の「力なき庶民」が司法制度によって押しつぶされることがある一方で、権力や財力を持つ人々は、たとえ罪は重くとも、持てる手段を駆使して少なくとも司法手続きを遅らせたり刑を軽くしたり、あるいは完全に罪を免れたりできる――イギリスの一般市民の目には、そんなふうに見えている。
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