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ウクライナが負けるなら、その領土を奪おうと画策する勢力がヨーロッパにある

ニューズウィーク日本版 / 2024年1月30日 17時5分

ウクライナ議会の外交委員長を務めるオレクサンドル・メレシュコ議員は本誌に対し、このタイミングでルーマニアとハンガリーが同時に領有権を主張し始めたことは、ウクライナにとって懸念材料だと語った。

「ロシアが攻勢を始めようとしているなか、それこそプーチンの思う壺だ」とメレシュコは主張し、「これらの発言が、なんらかの形で調整された上で行われた可能性も排除しない。同時に、ハンガリーとルーマニアの当局者らから強い反発の声もない」と述べた上で、さらにこう続けた。「とりわけ今、このような発言が行われるのは危険なことだ」

ロシア政府は、ヨーロッパの極右・極左政党を「西側諸国を不安定化させるための武器」として利用しようと常に模索している。ウクライナの情報機関は以前、ルーマニアAURのジョージ・シモン共同党首について、過去にロシア連邦保安庁とのつながりがあったと非難している。

 

AURもOHMも、伝統的にロシア寄りの立場を取ってきた。OHMはウクライナを「敵対国」と称し、ウクライナ政府に対して、和平と引き換えにロシア軍の占領地域を放棄するよう促してきた。AURは、ルーマニアによるウクライナへの軍事支援に反対し、この戦争は「我々の戦争ではない」と述べている。

ウクライナとハンガリーの関係は、ロシアがウクライナに本格侵攻を開始する以前から緊張状態にあった。ウクライナ西部に暮らす少数派のハンガリー系住民の権利をめぐる争いがその原因だ。

「親ウクライナ」のルーマニアは年内の選挙に注目

そして2022年2月にウクライナ戦争が始まって以降、ウクライナ・ハンガリー間の緊張はさらに高まっている。オルバンがEU(欧州連合)およびNATOで「スポイラー(ぶち壊し屋)」役を果たしていることがその理由だ。右派のポピュリストであるオルバンはEUの対ロシア制裁を何度も阻止しようと(あるいは骨抜きにしようと)し、またスウェーデンのNATO加盟にも反対してきた(1月24日にようやく支持を表明)。

一方のルーマニアは、2022年2月以降、重要なパートナーとしてウクライナにさまざまな兵器や物資を提供。西側諸国からの援助の橋渡し役を行い、ウクライナの代替輸出ルートとしての役割を果たしている。

だがルーマニアでは年内に議会選挙と大統領選挙が行われる予定で、現政府のウクライナ寄りの姿勢が継続されるかどうかが危ぶまれる。世論調査では、中道右派の国民自由党と共にマルチェル・チョラク首相率いる連立政府を構成している社会民主党が最も多い支持を獲得し、AURその次に多い支持を獲得している。



デービッド・ブレナン


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