日本の現実は「解散した方が合理的」な企業がほぼ半数...そこで起きた「株高」の理由と、期待感とは?
ニューズウィーク日本版 / 2024年2月2日 17時23分
<年明けからの株高は円安だけが原因ではない。日本企業に変化を促す東証の「荒療治」は、株式市場にどんな影響を与えるのか>
年明け以降、日経平均株価が顕著な上昇を見せている。直接的な原因は円安だが、背景には日本企業の経営改革に対する期待感がある。期待を期待だけで終わらせないためには、日本企業の経営が本当に変わったことを内外に示す必要がある。
2023年後半、日銀が金融政策の転換をほのめかしたことから、為替市場は一時、1ドル=140円近くまで円高が進んだ。その後、米国の利下げ予想の後退や、日本の景気に対する先行き不安などから、日銀による利上げが遠のくとの見方が高まり、為替は再び円安に戻している。
取りあえず、株式市場も円安を受けて上昇に転じた形だが、一方で、インフレ経済への転換を受けて、日本企業が今度こそ経営の体質転換を図るのではないかとの期待が外国人投資家の間で高まっている。これも株価を押し上げる要因になったと言えるだろう。
株価上昇を継続的なものにするためには、長年の課題であった日本企業の経営改革が何よりも重要であり、当面の注目点としては、過剰な割安株をいかに排除するのかというところに尽きる。
「上場失格」の企業が約半数を占める現状
東証には3000社を超える企業が上場しているが、PBR(株価純資産倍率)が1倍割れの状態で上場している企業が数多く存在しており、その数は23年3月時点で何と1800社に上る。
資金調達という本来の上場目的に照らした場合、PBRが1倍割れの状態というのは、理論上、解散したほうが合理的との解釈にならざるを得ず、こうした企業は「上場失格銘柄」と見なされる。上場銘柄の約半数がこうした状況だったことを考えると、日本市場が海外から見放され、株価が低迷を続けてきたのも当然の結果であった。
東証は一連の事態を改善するため、市場改革を何度も試みてきたが、企業側の抵抗が大きく、うまくいかなかった。業を煮やした東証がPBR1倍割れの企業について、事実上市場からの退出を促すなど、企業改革に本腰を入れ始めたことで、ようやく状況が変わってきた。
東証の動きを受けて、企業側も対応策を練らざるを得ない状況となっており、一部企業は株価を重視した経営への転換を試みている。こうした動きがポジティブに評価され、今回の株高につながったのは間違いない。
高い株価を維持する戦略と高い賃金は比例する関係
株価を意識した経営と聞くと、一部の人は短絡的にマネーゲームのようなものを想像するかもしれないが、現実は全く異なる。
先ほど説明したように、企業が株式をわざわざ上場するのは、資金調達が目的である。株価を高く維持することは、企業の資金調達環境改善につながり、最終的には業績拡大や従業員の賃金上昇をもたらす。高い株価を維持する経営戦略と高い賃金は基本的に比例する関係にあると考えていい。
PBRが1倍割れを起こしている企業の多くは、株価が割安なのではなく、将来に向けた十分な展望や戦略が描けていないのが現実だ。事実上、企業の経営に介入する東証の改革手法は荒療治と言えるかもしれないが、成長を実現できない企業は本来、株式を上場すべきではない。
長期にわたってぬるま湯につかり切っていた日本企業に対してはやむを得ない措置であり、経済全体への効果も大きいと考えられる。株式市場において企業の選別が進むのは決して悪いことではない。
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