1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 国際
  4. 国際総合

100年後、人類は世界自然遺産アレッチ氷河を眺められるか? 周辺自治体が温暖化対策を加速

ニューズウィーク日本版 / 2024年1月31日 18時27分

1860年以降は、アレッチ氷河は1年に最大で約50m(長さ)のペースで縮小を続けている。夏の暑い日には、1秒間に最大6万リットルの水が"大量の汗"となって流れ出す。夏季は1日平均10~12cm溶けていると聞いてはいたものの、「アレッチ自然保護センター」に展示されたアレッチ氷河の定点観測のスティックを見て改めて驚いた。計測スティックに貼られた各計測日を見ると、数日間のうちに本当に何cmも溶けている。定点観測は、同センターを運営する自然保護基金プロ・ナトゥーラが1992年より行っている。

「アレッチ自然保護センター」に展示された、2023年のアレッチ氷河の計測スティック。白いテープに各計測日が記され、氷河の厚みが減少している様子がわかる

アレッチ自然保護センターには、アレッチ氷河の歴史やアレッチヴァルトに生息する動植物の説明など様々な資料が展示されている。そこには「もし気候変動対策が継続的に行われて温室効果ガスが大量に削減できれば、氷河の量は長期間変化しないだろう」と記されていた。

しかし、現状はあまり楽観視できないようだ。2019年に、スイス連邦工科大学チューリッヒ校の研究者らが発表した氷河融解のシミュレーションはショッキングだ。パリ協定で規定されているように気温上昇を2度未満に抑えたとしても、2100年にはアレッチ氷河はほぼなくなり、冒頭でふれた北側の3つの氷河のみが残る予測なのだ。2~4度上昇と 4~8度上昇のシミュレーションも公開されており、4~8度上昇の場合、北側の3つの氷河もほぼ消滅してしまう。

地球温暖化は明らかにアルプス最大の氷河に大きな被害を与えている、というシミュレーション ETH Zürich / YouTube

築120年以上のヴィラ・カッセルは、現在アレッチ自然保護センターとして使われている。Fiesch / Creative Commons Attribution-Share Alike 3.0 Unported

気候変動の対策は?

アレッチ氷河の観光は先述のアレッチ自然保護センターの建物から始まった。それは築120年以上の大きい洋館で「ヴィラ・カッセル」とも呼ばれ、イギリスの富裕層アーネスト・カッセル氏が夏の間を過ごした私邸だった。英元首相ウィンストン・チャーチルなど政界や金融界の国外の著名人も滞在したという。富裕層に限らず一般の人たちもアレッチ氷河を訪れるようになったのは、1960年代だ。ヴィラ・カッセルには現在も宿泊できる。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

複数ページをまたぐ記事です

記事の最終ページでミッション達成してください