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【能登半島地震】正義ぶった自粛警察が災害救助の足を引っ張る

ニューズウィーク日本版 / 2024年2月1日 11時45分

ボランティアにも自粛圧力

被災地を支援する際、被災地のリソースを消費するなどしてかえって被災地に負担をかけてはいけないのは当然であり、災害ボランティア活動の大原則であるのは言うまでもない。しかしその原則が独り歩きして、個別の事情を顧みることなく、少しでも被災地に負担をかけたとみなされるやいないなや、SNSで過剰に攻撃されてしまうという現象が生じている。たとえば炊き出しのカレーをたった一杯だけ食べるようなことでさえ、猛烈に叩かれてしまうのだ。

コロナ禍で、外出制限がかかる中、様々な事情により制限に従うことができない人たちを見つけては攻撃する「自粛警察」が問題になった。能登地震でも、SNSでは「被災地に入って混乱を招いている素人」という虚像を血眼になって探している「警察」たちがみられる。しかし災害支援活動に対する「自粛警察」は、少なからず市民による災害支援活動の萎縮を招き、かえって救助や支援の迅速性や効率性を損なうかもしれない。

アメリカのノンフィクション作家レベッカ・ソルニットによれば、大きな事故や災害が起こった際、人々はパニックに陥るという直感に反して、互いに協力し助け合う「災害ユートピア」が生じる(『災害ユートピア なぜそのとき特別な共同体が立ち上がるのか』高月園子訳、亜紀書房 (2010年))という。一方、政府は人々を信頼できず過度に統制しようとするので、そのような人々の連帯を邪魔してしまうというのだ。

2012年に内閣府が編集した「防災ボランティア活動に関する論点集」では、東日本大震災時のボランティア活動について、「災害発生直後、被災地に行くことを抑制するメッセージが多方面から発信されたことで地域外からのボランティア活動の出足が鈍った」ことが課題の一つとしてあげられている。被災地の道路状況や支援の受け入れ態勢について適切な情報を発信することと、「自粛警察」になることは異なる。能登地震では、比較的早期に交通事情が改善された能登半島南部でも、1月上旬には既に人手不足が報じられていた。政府や自治体の発信、あるいは「自粛警察」化したSNSの人々は、東日本大震災の教訓を学んでいたのだろうか。

自主性や創意を恐れるな

今回の震災ではなぜ「自粛警察」がSNSを中心に発生してしまったのだろうか。今回バッシングの対象になったボランティア、ジャーナリスト、野党議員に共通しているのは、体制や権力の外側にいる立場だということだ。公権力の管理に服さない人々は、ソルニットが述べるように権力側の「エリート」にとっては災害時に混乱をもたらす存在でしかない。そのような偏見が、SNSに広がっているのではないだろうか。

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