イラクの親イラン武装組織「カタイブ・ヒズボラ」司令官暗殺で、高まる米軍追放の怒声と報復攻撃の脅し
ニューズウィーク日本版 / 2024年2月9日 12時12分
ヌジャバ運動はまた、イスラム教スンニ派のモハメド・スダニを首班とするイラクの現政権にも最後通告を突きつけた。
「イラク政府が(米政府に対し)断固たる態度を取らないのなら、神の意志によって、われわれはそれに報いなければならない。明白な罪を罰しなければ、何が待ち受けているか、彼らは思い知らされるだろう。われわれの忍耐はもはや限界に達した。当然の報いを待つがいい。われわれはしかるべき時に、しかるべき場所でそれを行う」
本誌は米中央軍とイラク人員動員隊にコメントを求めている。
米軍基地を攻撃「抵抗の枢軸」
カタイブ・ヒズボラとヌジャバ運動は、「イラクのイスラム抵抗運動」という組織にも加わっている。さらに「イラクのイスラム抵抗運動」は、アメリカとイスラエルを標的とする、イランの支援を受けた中東各地の武装組織のネットワークである「抵抗の枢軸」に属している。昨年10月7日にイスラム組織ハマスの奇襲攻撃を皮切りにイスラエル軍がガザに報復攻撃を開始し、今に至るまで4カ月、記録的な死者が出し続けているが、ガザにおける戦闘開始直後の10月半ばから、「抵抗の枢軸」はイラクとシリアの駐留米軍を標的にロケット砲とドローンでたびたび攻撃を行ってきた。
「イラクのイスラム抵抗運動」に属するもう1つの武装組織「アシャブ・アルカーフ」も米軍の攻撃に対する報復を誓い、「報復の目覚まし時計をセットせよ。その分針はミサイルで、秒針はドローンだ」とメンバーに呼びかけている。
「イラクのイスラム抵抗運動」も、イエメンの武装組織フーシ派と同様、イスラエルに対する一連の攻撃について犯行声明を出している。フーシ派は、紅海とアデン湾を航行するイスラエルと関係する貨物船を狙って、一連の攻撃を行ってきた。これに対し米英軍はイエメンのフーシ派支配地域に報復攻撃を実施、直近では2月6日に空と海から数十カ所の拠点を爆撃した。
米軍はここ数カ月、イラクとシリアの駐留部隊を狙った攻撃に対し、何回か空爆を行ってきたが、先月末ヨルダンとシリアの国境地帯にある米軍基地がドローン攻撃を受け、米兵3人が死亡したことで米政界の風向きは一変した。報復攻撃を支持する声が一気に高まり、ジョー・バイデン米大統領は2月2日、イラクとシリアの7カ所の軍事施設にある80余りの標的に対する空爆を命じた。これらは全て、イランの革命防衛隊と「イラクのイスラム抵抗運動」傘下の武装組織が使用しているとみられる施設だ。
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