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なぜウクライナは「世界一の親イスラエル国」なのか

ニューズウィーク日本版 / 2024年2月13日 20時0分

以上の2点を筆者なりに要約すれば、ウクライナで目立つイスラエル支持は「欧米的であろうとする」意識の強さの表れといえる。

「いかにも欧米的」な思考

ここでいう「欧米的」とは決してポジティブな意味ではない。

あえていえば、白人の被害を重視してムスリムや有色人種の犠牲を軽視するのも、それを自由や民主主義といった高尚な大義で正当化するのも、欧米では珍しくない。

19世紀にアルジェリアを占領したフランスは、20世紀後半に独立戦争(1954〜1962)に直面した。この独立戦争に参加した黒人精神科医フランツ・ファノンは、人権や自由といった大義を掲げたヨーロッパの欺瞞を暴いた。

「サカマティ峠での7人のフランス人殺傷は‘文明人’を激怒させるが、ゲルグールのテント村やジュラの村落の略奪、住民の虐殺といった、まさに現地人による奇襲攻撃の動機となったものは‘勘定にも入らない’...」(『地に呪われたる者』)

このファノンにとって、ヨーロッパでのユダヤ人迫害は白人同士の「内輪喧嘩」にすぎなかった。

60年近く前の指摘は、現代でも無縁ではない。

実際、国連加盟国の大半を占める途上国・新興国が数十年にわたってイスラエルによるパレスチナ占領を国際法違反の植民地主義と批判してきたにもかかわらず、欧米では「欧米の一部」としてのイスラエルへの支持が目立つ。

インド出身のジャーナリスト、ビドゥヤ・クリシュナン氏は欧米メディアの多くの「一方的な報道」を典型的な「植民地主義ジャーナリズム」と辛辣に批判する。

その意味では、ウクライナで目立つイスラエル支持は「いかにも欧米的」とさえいえる。

欧米における変化とのギャップ

もちろん、ウクライナでもイスラエル批判はある。例えば、昨年11月、300人以上の研究者、アーティスト、人権活動家などが「パレスチナとの連帯」を掲げる公開書簡を発表した。

この書簡はハマスによる民間人攻撃を非難する一方、パレスチナ人全体を標的にするべきではないとも主張する。さらに、「ハマスの台頭はイスラエルによる長年のパレスチナ占領がもたらした」とも指摘し、植民地主義的という意味でロシアによるウクライナ占領との類似性を強調している。

しかし、こうした認識はあくまでウクライナの少数派のようだ。

これに対して、欧米では変化の兆しがみられる。

冒頭で触れたようにガザ危機をきっかけに欧米各国では、これまでになくイスラエル批判が噴出している。アメリカでさえ「ハマスと一般のパレスチナ人を識別して考えるべき」(つまり「‘テロ対策’によってパレスチナ民間人の犠牲を正当化できない」)と考える人は昨年11月には48%にまで増えた(「識別しなくてよい」は27%)。

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