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イスラエル軍の「ラファ地上侵攻」はアメリカの中東政策を破壊する

ニューズウィーク日本版 / 2024年2月13日 18時50分

ジミー・カーター以降の歴代米大統領は、1979年にアメリカの仲介によってエジプトとイスラエルの間で締結された平和条約を、中東のより幅広い安定を推し進める土台としてきた。

エジプトは、アラブ諸国として初めてイスラエルを承認。これが1994年のイスラエル・ヨルダン間の和平条約に扉を開き、ドナルド・トランプ米前政権下で結ばれたイスラエルと一部アラブ諸国の国交正常化合意(アブラハム合意)につながった。

10月7日のハマスによるイスラエル攻撃をきっかけに、中東で再び紛争が勃発して以降、エジプトは再びアメリカにとってきわめて重要な同盟国として存在感を強めてきた。ハマスは7日のイスラエル攻撃で約1200人を殺害し、約240人を拉致。報復に立ち上がったイスラエルは、ガザ地区でのハマス壊滅を目指して大規模な軍事作戦を開始した。

アメリカはエジプトをはじめとする地域のパートナーと緊密に連携し、2023年11月にイスラエルとハマスの戦闘停止を実現させた。エジプトも、戦闘に巻き込まれたガザ地区の民間人に食料や医薬品などの人道支援物資を届けるための国際的な取り組みを支援してきた。

一方で、エジプトはガザ地区との境界の警備をさらに強化し、ガザ地区の住民がエジプトに逃れることは認めない姿勢を明確にしている。

ガザの保健省によれば、戦闘開始以降、イスラエル軍によって殺害されたガザの民間人は2万8000人を超えている。ガザ地区の人道危機が悪化するなか、米与党・民主党の進歩派からも、イスラエルへの支援を続けるバイデンへの批判の声が上がっている。さらにイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相が2月9日に、ラファへの進軍に向けて軍に計画提出を指示したとしたことを受けて、バイデンに対して戦闘を終結させるよう求める圧力がますます高まっている。

バイデンはラファ侵攻に強い懸念を表明

イスラエル首相府の声明によれば、ネタニヤフは軍に対して9日、ラファから民間人を退避させ、また同地域に残っているハマスを壊滅させる「同時計画」の策定を指示した。首相府は声明で、「ラファにハマスの4大隊が残っているままではハマスの壊滅を達成することは不可能」と説明した。

米ウォール・ストリート・ジャーナル紙によれば、この発表を受けてエジプトは、イスラエルとの平和条約を停止する可能性を警告した。バイデンも11日、ネタニヤフとの電話会談で、ラファ侵攻に先立ち民間人の安全を確保するよう警告した。ホワイトハウスは、「(バイデン大統領は)ラファに避難している100万人超の民間人の安全を確保し、支援を行うための確実に実行可能な計画なしに、同地域への軍事作戦を進めることはできないとの考えを改めて示した」と述べた。

ダニエル・ブッシュ(本誌ホワイトハウス担当)


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