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在日外国人と日本社会の共生努力を後退させる右派の差別扇動

ニューズウィーク日本版 / 2024年2月27日 15時24分

差別の拡大には、クルド人が置かれている政治的立場も関係している。クルド人は中東地域の広い範囲に住む人々だが、彼ら自身の国家はない。クルド人が約1500万人住むトルコは、クルド人を「山岳トルコ人」と呼び民族性を否定するなど、長きにわたって弾圧し続けてきた。近年ではEU加盟を見据え弾圧政策を転換し、様々な権利を認め始めているが、やはりクルド独立運動の支持者やトルコからの難民申請者を含む日本のクルド人コミュニティとは確執がある。

日本でクルド人差別が高まりをみせるのと呼応するかのように、トルコ大使館はクルド文化協会およびそのの代表者らを、クルド独立を求めてトルコ政府と抗争を行っている武装組織PKKの支援者だとしてトルコにある資産凍結を行った。。協会はPKKを支援したことはないと主張しているが、差別右派団体や右派ジャーナリストらは、こうしたトルコ政府の政治的な発信を一方的に受容し、「クルド人はテロ支援者だ」などと主張して差別宣伝に利用している。またSNSでは、恐らくトルコ在住の反クルド主義者だと思われるアカウントが日本在住のクルド人になりすまし、日本人の不安を煽るようなコメントを書き、それが更に日本の差別主義者によって拡散されるというマッチポンプ式の憎悪扇動も確認されている。

文化が異なる人々がある地域で急速に増加すると、様々なトラブルが発生するのも事実だ。しかしそこには多分にマジョリティ側の偏見や差別感情が伴う。日本人も行っているようなルール違反であってもクルド人の場合だけ殊更に問題にされる。あるいはクルド人が行っていない犯罪行為もクルド人のせいにされてしまう。単純な知識不足や伝達不足の問題を大げさに問題視する、といったケースが確認されている。

一方、日本クルド人文化協会は、「クルド人は怖い・クルド人はトラブルの種である」という偏見を払拭するために、クルド人コミュニティを地域社会と共生させるための取り組み、例えば地域パトロールやゴミ拾い、あるいはゴミ出しのルール違反などルールを知らないために起こってしまうトラブルを解消するための啓発活動に取り組んでいる。また日本人の支援団体も、言語学習のサポートなどを行ってきている。

共生のためにはマイノリティにばかり努力させるだけではなく、マジョリティ側の理解と包摂の努力も必要だ。まして、SNSで様々なトラブルを大きく誇張して差別を扇動し、共生のための努力を外側から破壊しようとする行動は許されてはならないはずだ。

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