世界がまだ気付いていない「重大リスク」...イスラエルとヒズボラの「戦争が迫っている」と言える理由
ニューズウィーク日本版 / 2024年3月6日 11時8分
外交的な解決は不可能
それでも、米議会はいずれ本腰を入れて対外支援法案を可決するだろう。イスラエルは今も米議会で高い支持を得ている。アナリストらは特別な事情がない限り、イスラエルへの安全保障上の支援は容易に可決されるとの見方を示している。
しかし米議会ではこのところ、広く支持されてきた取り組みや法案が、政治の二極化や権力政治、議会の機能不全による混乱に巻き込まれている。議論の余地が比較的少ない対イスラエル支援は、より賛否の多いウクライナ支援や、アメリカ最大の政治的争点である国境管理の問題とつながっている。選挙の年に突入した今、複雑さを増しているウクライナ情勢と、国境管理問題が解決するまで、イスラエルは待たされることになるかもしれない。
米議会は最終的には行動を起こすはずだ。そうなれば、イスラエルの最後の制約がなくなる。おそらくその頃までにはガザでの軍事作戦は縮小され、イスラエル軍はヒズボラ対策に集中できるようになっている。
ヒズボラとイスラエル双方にとっての制約が緩むと、あらゆる兆候が戦争勃発の可能性を指し示す。
両者の互いへの攻撃は、双方のより奥深い場所で、より大胆に展開されるようになってきた。2月26日にはイスラエル軍が、レバノン南部でドローンを撃墜された報復として東部のベカー高原にあるヒズボラの防空施設を攻撃。その前にはヒズボラがイスラエル北部にドローンを送り込み、イスラエル空軍はレバノン南部の武器庫を攻撃した。
戦争回避に向けた努力をしているアメリカとフランスには、賛辞を贈りたい。だが両国が認識しつつあるとおり、ヒズボラとイスラエルの間では双方が納得する結末が描けず、外交的な解決はあり得ない。そうなると今後は、ヒズボラを率いるナスララが部隊にリタニ川へ後退するよう命じるか、イスラエルが力ずくでそうさせるかのどちらかだ。
ヒズボラは抵抗するだろう。彼らは抵抗のために存在し、抵抗こそがレバノン国内での名誉挽回に最も理にかなった方法だ。戦争勃発を止める手だては、もうなさそうだ。
From Foreign Policy Magazine
スティーブン・クック(米外交問題評議会上級研究員)
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