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備えるべきは「止まらない円安」ではなく「円高」

ニューズウィーク日本版 / 2024年3月6日 18時9分

ただ、これまでの大幅な円安が、輸入物価上昇などを通じて、日本の価格を押し上げていることは否定するのは難しいだろう。通貨安が進めば進むほど、それが将来の価格上昇や企業業績の改善をもたらし、経済成長を押し上げる効果が顕在化する、ということである。

円安が止まらないと予想する論者の理屈は

一方で、円安が止まらないと予想する論者は、通貨安が、将来の経済復調をもたらしインフレを押し上げる経路を軽視(場合によっては無視)しつつ、通貨安が「家計などの購買力を低下させる」負の影響を重視しているのかもしれない。確かに、通貨安が進んでも経済活動が全く良くならないのであれば、「通貨安は止まらない」が自然な理屈である。

ただ、通貨安(や通貨高)が大きく進んだ場合には、それが経済活動に影響を及ぼすことを通じて、通貨高(や通貨安)をもたらす効果は、通常、時間の経過とともにあらわれる。こうしたメカニズムを考えれば、新興国などがかつて直面した通貨危機などの突発的なケースを除けば、日本の通貨安が永続する可能性は、やはり低い様に思われる。

例えば、筆者の予想とは真逆ではあるのだが、仮に何等かのショックが起きて、1ドル200円まで円安が進んだ場合どうなるだろうか。日本製品やサービスの価格競争力が更に高まるので、むしろ日銀の利上げ時期が早まり、通貨円に対する上昇圧力はむしろ強まるのではないか。

  

想定外に円高が進むシナリオに備えるべき局面

要するに、行き過ぎた金融緩和によって、「円が紙くずになる」と主張する論者が懸念する状況が訪れる前に、円や日本製品が十分安くなるのだから、割安になった日本製品が買われたり、あるいは企業業績が一段と改善するとの期待が、金利上昇や株高をもたらし通貨安に歯止めがかかることが、現実に起こるのではないか、ということである。

実際に、1ドル150円というのは、先述したとおり、購買力平価との対比などから、かなり円安水準であり、それ故に海外通貨と比べて日本円が割安(=円の購買力が低い)ことを、示唆する報道は頻繁にみられる。早晩、「円の割安さ」が和らぐ方向で、為替市場では円高圧力が強まるのではないか。止まらない円安ではなく、想定外に円高が進むシナリオに備えるべき局面が近づきつつあるのではないか、と筆者は考えている。

(本稿で示された内容や意見は筆者個人によるもので、所属する機関の見解を示すものではありません)

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