日本は尖閣沖の中国製漂流ブイを撤去せよ
ニューズウィーク日本版 / 2024年3月6日 11時37分
戦狼外交においては、小さな行動をひっきりなしに積み重ねることにより、中国のコントロール下に置く地域を着々と広げていくことを目指す。領有権争いがある土地で境界線から数㍍ほど相手側に侵入したり、領有権の主張が衝突している海域や空域に艦船や航空機を侵入させたりする。中国はこうした活動を繰り返すことにより、相手国を挑発する。対抗措置を取って緊張をエスカレートさせる勇気があるのならやってみろ、というわけだ。
「プレゼンスの拡大と恒久化」を狙う
実際、中国はインドとの関係でこうしたことを実践した。中国は2020年、両国が領有権を争うヒマラヤ山脈地帯で「実効支配線」のインド側に侵入し、構造物を設置した。中国の侵入行為は、インド兵が対抗して小競り合いに発展するまで続いた。この衝突によりインド側で20人以上が死亡し、中国側にも死者(人数は不詳)が出た。中国は同じようなことを、南シナ海でフィリピンとベトナムに対して、台湾海峡と金門島周辺で台湾に対しても行っている。
そして、中国は尖閣諸島周辺の海域や空域への侵入の頻度も増やしている。ある法学者の言葉を借りればこの領域での「プレゼンスの拡大と恒久化」を行い、中国側の領有権の主張を正当化することにより、決定的な対決を避けながら現状変更を行おうとしているのだ。
中国側がこうした戦略を実践した場合、相手国は、中国の行動(一つ一つの事案は些細なものだ)を結果的に放置するか、それとも暴力を伴う衝突を辞さずに対抗措置を講じるかの選択を迫られる。
日本政府は今回、再び中国政府に外交上の抗議を行うだけでは十分でない。中国は既に約10年間にわたり、尖閣諸島の領有権をめぐる主張を強化し、日本の領有権を突き崩すための行動を次第に増やしてきた。それにより、外交的・法的議論の土台が変わり、現状が変更されようとしている。
日本政府はあくまでも冷静に、「迷子」のブイを撤去して、自国のEEZの域外に移動させるべきである。
【動画】日本で講演した筆者の元CIA工作員グレン・カール
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