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サンリオファンが愛する『いちご新聞』はなぜ誕生したのか...「いちごの王さま」の「ファンシーな教養主義」

ニューズウィーク日本版 / 2024年3月15日 9時25分

2021年から各地で開催されている「サンリオ展」の図録には、『いちご新聞』と「いちごの王さま」の関係がこのように紹介されている。

いちごの王様は『いちご新聞』をつくった平和の国の王様ですが、平和を願う気持ちだけは、どんな大国にも負けません。世界中を争いのない平和な世界にするために、「いちごの王さまからのメッセージを発信し続けています。」

『いちご新聞』は単にサンリオキャラクターの販促のためにあるのではなく、本来の目的は、「いちごの王さま」が「平和な世界」にするためにメッセージを発信することだという。

『いちご新聞』紙上では、「いちごの王さまのメッセージ」は『いちご新聞』の「社説」とされている。

後で触れるが、実際の『いちご新聞』の読者はサンリオのキャラクターのイラストを見ることが目的であった人も多かったようだ。

しかし『いちご新聞』の方針は、まず「いちごの王さま」からのメッセージを読者に向けて届けることだった。

そもそも「いちごの王さま」がサンリオのキャラクターとして形成されたのも『いちご新聞』の中であった。

1975年12月1日号のメッセージでは「いちご新聞を読んでいるみなさん、15号の表紙いかがでしたか。いちごの王さまとかわいらしいいちごの天使たちが、やっとみなさんの前に幻のベールをぬぎました」と語られているとおり、「いちごの王さま」のイラストが『いちご新聞』紙上ではじめてお披露目されている。

サンリオのキャラクターが『いちご新聞』紙上で取り上げられ、特集されることは、創刊当初から現在に至るまで行われている。

しかし「いちごの王さま」が他のキャラクターと違う特殊な成立事情を抱えているのは、『いちご新聞』の中で「いちごの王さま」という名前がまず記されて、その後キャラクターのイラストが『いちご新聞』紙上で披露されたという経緯があるからである。

つまり「いちごの王さま」とは『いちご新聞』の中で、『いちご新聞』とともに、形づくられた存在であったのだ。

興味深いのは、「いちごの王さま」が『いちご新聞』の中で、キャラクターとして確立していくと、反比例するように辻信太郎の名前が消えていくことだ。当初「いちごの王さま=辻信太郎」と署名されていた「いちごの王さまのメッセージ」から辻の名前が消されている。

創刊号では、「いちごの王さまのメッセージ」と一面に掲載され、末尾はこのような形で締めくくられる。

「いちご新聞」は、こんな強い大きな望みの中で、今日発刊されました。
私、いちごの王様なんていわれてはずかしいけれど、まっかな希望にもえたいちごが、どんどん育っていくために、力の限りにつくしていきたいと思います。辻信太郎(1975年4月1日号) 

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