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長期衰退に入った中国、習近平は進むも退くも地獄

ニューズウィーク日本版 / 2024年3月12日 14時28分

結果として恐怖と疑念にとらわれ無為無策に陥った今の習は、「ビュリダンのロバ」に似ていなくもない。この故事に出てくるロバは空腹で喉も渇いているが、右にある飼い葉と左にある水の入ったおけのどちらに行ったらいいのか決められない。ただし習の場合はどちらを選んでも、毒を口にすることになる。

習と前任者たちは国内外で見えから分不相応な目標を掲げ、欠陥だらけの発展モデルを使い尽くして身動きが取れなくなった。

例えば不動産業では開発大手の中国恒大集団と碧桂園が解体されつつあり、経営破綻は2社で済まないだろう。政府が介入しなければ不動産セクターの崩壊が金融市場を破綻させ、中国経済全体に危機をもたらすかもしれない。

一方政府には不動産業に数兆元を投入し、投機を刺激する選択肢もある。だがその場しのぎの救済策は後々問題を悪化させるだけで、習政権が掲げる「住宅は住むためのものであって投機対象ではない」という方針とも矛盾する。

国際関係でも似たような、しかしもっと重大なジレンマに直面している。習はアメリカ主導の世界秩序の弱体化を目指し、西側に浸透して破壊と盗みを行い、その全てを「東昇西降」という挑発的なスローガンでまとめてきた。

一方で、中国は外国人投資家を最も必要としている時期にもかかわらず、彼らを急速に失いつつある。習は中国と西側のデカップリングが中国経済を、特にハイテク部門をいずれ破壊することにようやく気付き、その流れを食い止めようとしている。

確かに習もいくつか譲歩をしている。不動産投機への嫌がらせは止めた。中国の外交官は西側を挑発する戦狼スタイルを抑えている。習自身も昨年11月にサンフランシスコ近郊でジョー・バイデン米大統領と会談した際に、中国は既存の世界秩序を弱体化させるつもりはないと強調した。

習近平が大転換をためらうワケ

もっとも、そんな習を信じる者はほとんどいない。少しでも実効性を示すには、数々の悪政を放棄せざるを得ない。外国企業の従業員をスパイ容疑で恣意的に投獄すること、フィリピンや台湾をいじめること、南シナ海で進める実効支配――。

しかし、そこまで引き下がることもできず、従って西側からの助け舟は期待できないだろう。米中首脳会談から手ぶらで帰国した習は、3中全会で有効な政策を示せないことを分かっており、開催日程さえ発表しないままだ。

歴史を振り返れば、共産主義の独裁者が政策を大転換したこともあった。レーニンは1921年に破滅的な戦時共産主義から資本主義寄りの新経済政策に転換した。毛沢東は58~62年に大飢饉を引き起こした大躍進政策と人民公社化の大失敗を悟り、イデオロギーを後退させて譲歩した。

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