歌姫ビヨンセの新曲「16キャリッジズ」「テキサス・ホールデム」が起こす、カントリー音楽の大革命
ニューズウィーク日本版 / 2024年3月16日 15時10分
例外は、20世紀カントリー界の大御所ジョニー・キャッシュのメンターだったガス・キャノンだろう。黒人バンジョー奏者のキャノンは、20年代にキャノンズ・ジャグ・ストンパーズとしてレコーディングをしており、60年代のニューフォークの時代にも再び人気を集めた。
カントリーでよく使われる楽器には、黒人文化からもたらされたものもある。例えばバンジョーのルーツはアフリカだ。
ビヨンセの「テキサス・ホールデム」も、軽快なバンジョーのイントロが印象的だ。演奏しているのは、グラミー賞も受賞したリアノン・ギデンズ。この人選を見ても、ビヨンセの新曲が正真正銘のカントリーであることは間違いないだろう。
バンジョー奏者として活躍したガス・キャノン MICHAEL OCHS ARCHIVES/GETTY IMAGES
とはいえ、過去の黒人アーティストには苦しみもあった。70年代にカントリーの大ヒットを飛ばしたチャーリー・プライドは、このジャンルで達成したいくつもの「黒人初」に言及されることを嫌い、たまたま黒人として生まれたカントリーミュージシャンとして扱われることを望んだ。
カントリーへの贈り物
2020年に「ブラック・ライク・ミー」の大ヒットを飛ばしたミッキー・ガイトンは、カントリーの聖地であるテネシー州ナッシュビルで、黒人女性として直面した壁を率直に歌っている。
特にこの5年ほどは、カントリーチャートをにぎわせる黒人ミュージシャンが増えている。カントリー・ラップ曲「オールド・タウン・ロード」を大ヒットさせたリル・ナズ・Xがいい例だろう。
一方、白人のカントリーミュージシャンが黒人の作品をカバーした例もある。
ルーク・コームズがカバーした、トレイシー・チャップマンの88年の名曲「ファスト・カー」は昨年、カントリーチャートで第1位を獲得した。これによりチャップマンは黒人女性として初めて、カントリー音楽協会賞の最優秀楽曲賞を受賞した。
2月に開かれたグラミー賞授賞式では、コームズとチャップマンの共演が実現して大きな話題になるとともに、黒人音楽とカントリーの親和性、そして異なるジャンルのミュージシャンによるコラボレーションのパワーを見せつけた。
ビヨンセの熱心なファンのおかげもあり、「テキサス・ホールデム」と「16キャリッジズ」は、総合チャートとカントリーチャートの両方でトップを獲得している。伝統的なカントリーファンの拒絶反応は続くかもしれないが、全米チャートに大きな影響を与えるカントリー専門ラジオ局の幹部たちは、ビヨンセの新曲は「カントリーへのプレゼントだ」と歓迎の姿勢を示している。
ビヨンセの参入によって、カントリーと黒人音楽の融合がより主流になれば、人種のような社会的に構築されたカテゴリーがアートの世界に適用されることの是非について、新たな議論が生まれるかもしれない。それは重大な革命だ。
William Nash, Professor of American Studies and English and American Literatures, Middlebury
This article is republished from The Conversation under a Creative Commons license. Read the original article.
-
- 1
- 2
この記事に関連するニュース
-
「ベートーヴェンからアフリカのリズムが聴こえる」ジョン・バティステが語る音楽の新しい可能性
Rolling Stone Japan / 2024年11月15日 17時45分
-
ビヨンセ、グラミー賞史上最多ノミネートを記録!最優秀アルバム賞ではテイラー、ビリーらと争い
よろず~ニュース / 2024年11月13日 7時30分
-
第67回グラミー賞(R)ノミネーション発表!2025年2月3日(月)午前に授賞式の模様をWOWOWで独占生中継にて放送・配信!
PR TIMES / 2024年11月9日 11時45分
-
「エゴは外に置いてきて」 クインシー・ジョーンズ、個性派スターをまとめあげた『We Are The World』の奇跡
ニューズウィーク日本版 / 2024年11月6日 17時32分
-
クインシー・ジョーンズという功績 音楽とともに生きたその人生
Rolling Stone Japan / 2024年11月5日 12時15分
ランキング
-
1篠原涼子・市村正親の長男が警察ザタ!三田佳子の二男ら“お騒がせ2世”化を危ぶむ声も
女子SPA! / 2024年11月24日 15時47分
-
2北村弁護士 「行列」欠席の理由に共演者総ツッコミ「満喫してるやん!」「遊んでる!」
スポニチアネックス / 2024年11月24日 22時22分
-
3黒木メイサ 薄すぎる?メイクで新たな魅力発見「吸い込まれそうな瞳」「10歳は若く見える」と変化に驚きの声続々
スポーツ報知 / 2024年11月24日 19時29分
-
4柳葉敏郎「暴れまくっていた」ドラマロケ地で謝罪「ぐちゃぐちゃにして帰ってしまいまして」
スポニチアネックス / 2024年11月24日 16時14分
-
5上沼恵美子 PayPayの衝撃のチャージ額明かす スタジオ驚がく「30万でドキドキします!?」
スポニチアネックス / 2024年11月24日 15時57分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください