ミャンマー「解放区」の実像:3年前のクーデターの勢いが衰えた国軍に立ち向かう武装勢力の姿
ニューズウィーク日本版 / 2024年3月18日 16時43分
「ここだって完全に安全じゃない。空爆もあるしね」と彼女は言った。
「安全が保証されるなら、すぐにでもロイコーへ帰りたいよ」
それでも避難先のデモソで生計を立てられる人は恵まれている。
新しいビジネスを始めるためのスキルや資本を持たない人にとっては、ここでの生活も厳しい。
状況が一変する可能性も
農家出身のセシリアは、故郷に戻りたくても戻れない。
デモソ東部の実家は空爆と砲撃で破壊されてしまった。
しかも時がたつにつれて、地域社会や国外在住ミャンマー人からの義援金も減ってきたと感じている。
「なんとかして家を建て直し、農園を復活させたい。この戦争が終わったら、一からやり直しだね」
筆者の取材に応じた国内避難民の誰もが、既に2度も3度も避難を重ねている。
KNDFのマルウィ副司令官によると、国軍は州都ロイコー防衛のためにデモソやメーセから兵を引いた。
おかげで今は、こうした地域が反軍勢力の支配下にある。だから今のうちに人々が戻ってきて、農業を再開してくれたらいい、とマルウィは言う。
「革命の火を燃やすのは民衆の底力だから」
今や反軍政の火の手は国内各地で上がっているから、国軍としても全てには対応できず、戦略的な要衝に戦力を集中せざるを得ない。
国際危機センターのホージーによれば、例えばロイコーだ。
州都であり、近くには重要な水力発電所があるし、首都ネピドーからも遠くない。一方、タイと国境を接する山間の町メーセなどの優先順位は低い。
ではデモソの町はどうか?
「デモソの状況は微妙で、どちらへ転んでもおかしくない。今のところは無事だが、ひとたび国軍がロイコーの制圧に成功すれば、次はデモソへ攻め込むかもしれない」とホージーは言う。
だから油断は禁物。
「全てが不安定だ。今の解放区も、いつ取り返されるか分からない」
<本誌2024年3月12日号掲載>
From Foreign Policy Magazine
【現地映像】軍政への少数民族・若者の抵抗戦線
アンドルー・ナチェムソン(タイ在住ジャーナリスト)
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