植田日銀の大規模緩和「出口戦略」は成功しているのか?
ニューズウィーク日本版 / 2024年3月20日 11時0分
ということは、この「大規模緩和の出口戦略」について、植田日銀はソフトランディングに成功した、少なくとも現時点ではそのように見えます。ちなみに、円高にならず、株も下がらなかった理由としては、日銀が追加利上げの方向性を示さなかったからという解説がされています。
ですが、見方を変えるのであれば、実体経済を反映した「円の実力」が相当に落ちており、その結果として緩和政策を止めても、市場からの円高圧力は生まれなかったという可能性はあります。そして、円高にならないのであれば、海外で収益を作ってくる日本発の多国籍企業の収益は縮小しません。ですから株は上がるというわけです。
中長期的に見れば、このトレンドは日本経済の宿命かもしれません。ですが、今回の緩和政策の出口において、期間限定でもいいので一時期の円高というのは、起きても良かったように思います。また、この後で起きるのであれば、そのメリットを活かすべきです。
具体的には、その円高の期間に、多くの若者を英語圏などに留学させる、輸入しなくてはならないエネルギー、資材、原材料などの価格を下げて物価を沈静化させるといった、「円高メリット」を日本経済に注入するのです。
また、円高になれば多国籍企業における「日本国内の生産性」は厳しく問われるようになります。だからといって、これを契機に更に空洞化を進めるのではなく、久々の円高を利用して、後には引けない格好で国内の生産性アップを実現する改革を行う契機にもなるかもしれません。
まだ年度明け以降の動向は分かりませんが、ソフトランディングということでは、今回の「異次元緩和の出口戦略」は成功しているように見えます。ですが、それでも円が上がらない中で、今後も中長期的な円安トレンドが延々と続くのであれば、格差は広がっていくだけです。つまり、日本経済は、グローバル経済とリンクした部分と、純粋に国内向けの部分に、よりシャープに分かれていくということです。
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