私の体のことは私が決める...「中絶する権利」を求め闘った女性たちの団体「ジェーン」の「埋もれた歴史」
ニューズウィーク日本版 / 2024年3月27日 15時0分
「ジェーン」はシカゴの活動家たちの団体で、違法だが安全な中絶手術を女性たちに手頃な料金で提供した。
脚本のヘイリー・ショアとロシャン・セティは、ショアの母親の友人で「ジェーン」の創設メンバーのジュディス・アーカナを通して「ジェーン」の活動を知った。ショアはアーカナにたびたび会って「ジェーン」の当時の活動内容について話し合い、セティと共に最終版までに28本の草稿を書いたという。
ナジーは本作を監督するまで「ジェーン」についてよく知らなかったが、すぐにこの物語に光を当てることがいかに重要かに気付いたという。
「アメリカの女性たちの勇気ある行動の歴史を知らないようなもの。私たちはこの歴史を教わっていない。陰に埋もれがちな集団やマイノリティーの集団の歴史の大半は、支配階級など主導権を握っている集団が決めると言っていいだろう」
本作に登場するのは架空の人物だが、実在の「ジェーン」のさまざまな部分を象徴しているとナジーは言う。
「実際の『ジェーン』内部に序列はなかった。映画ではリーダーが必要だったのでシガニー・ウィーバーが登場する。そしてエリザベス・バンクスが演じる主人公は『ジェーン』の初期、自分たちで中絶手術を行うようになる前の依頼人たちの代表だ」
「自分たちで行うようになると、中絶費用を前金で全額支払わなくて済むようになり、それが手術を依頼した女性たちから法外な手術代を払えないほかの女性たちにも口コミで伝わっていった。68年の600ドルといえば誰にとっても大金、まして貧しい女性には工面できるわけがない。そういう部分はリアルだ」
彼女たちの闘いは実を結んだかに見えたが ©2022 VINTAGE PARK, INC. ALL RIGHTS RESERVED.
「ハッピーエンド」は遠く
映画はロー対ウェード判決が施行されて幕を閉じる。「ジェーン」が自分たちが救った女性たちの名前を記載したカードを燃やし、賃金の男女格差など次に取り組みたい問題について議論する場面を、ナジーは次のように振り返る。
「実際の『ジェーン』も依頼人の名前とプロフィールを記載したカードを破棄した。でも実は、いま炎上しているのは私たち、世界全体だ。その原因であるファシズム──としか言いようがないが──の台頭と両極化で人々がいがみ合うことが増えているせいで、ラストシーンがきれいごとのように感じられる」
「ジェーン」の取り組みはロー対ウェード判決が覆されただけになおさら、政治的行動主義の継続がいかに重要かを示したとナジーは言う。
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