【写真展】情景の「やまびこ」が日本とカナダで共鳴する
ニューズウィーク日本版 / 2024年4月3日 11時0分
<日本とカナダの2つの祖国を持つ写真家・野辺地ジョージの写真展『やまびこ/Echo』(東京・カナダ大使館高円宮記念ギャラリー)が開催中。「ハーフ」ではなく「ダブル」の視点が生み出す和みのハーモニー>
日本とカナダの両国にルーツを持つ写真家、野辺地ジョージの写真展『やまびこ/Echo』では、日本とカナダでそれぞれの日常に起きた小さな奇跡の情景が、大海を越えて溶け合っている。
小学生まで日本で暮らした野辺地は、高校教師だった祖父の影響を強く受け、宮沢賢治や古事記、古今和歌集などの世界に浸った。その後カナダで過ごした経験は、何げない日常にある日本の美を捉える感性を育んだ。カナダでは勇壮な自然の中でも、身に染み込んだ「もののあはれ」や浮世絵などの日本特有の美的理念をもとに景趣を切り取ってきた。すると2カ国で制作した作品の中に、意図せず対となる写真が生まれていた。
東京・赤坂にあるカナダ大使館高円宮記念ギャラリーで開催中の写真展(5月10日まで)では、会場の右側にカナダ、左側に日本で撮影された写真が並ぶ。ここで紹介している対の写真は、太平洋をイメージした中央の広い空間を挟んで、両側の壁にそれぞれが離れて展示されている。
窓越しの風景は、内から外を眺めたのではなく、自らの「心の中をのぞいたもの」だと野辺地は言う。子供の頃には「純粋な日本人ではない」と言われ、カナダでも周囲のカナダ人とは違っていた。両国でアウトサイダーである孤独、「窓からはのぞけるが、どちらへも最後の領域までは踏み込めない自分」が投影されている。
だが、そこに否定的な感情はない。自分と両国との間に微妙な距離があればこそ、インサイダーには見えないものが見える。野辺地は「みんなとは少し違うことは決してマイナスではなくプラス。『ハーフ』ではなく『ダブル』の視点から眺める両国は一層輝かしく見える」と言う。カメラを手にすることでアウトサイダーからオブザーバー(観察者)へと転換し、いつもの風景を美へと昇華させていく。
会場中央にある野辺地のセルフポートレートは、海を隔てた両国の間で両者の本質を見つめる「第三の眼」。共鳴し合う写真の「やまびこ」が、野辺地の追い求める和みのハーモニーを奏でる。
【写真(上から)】
雄島、福井県(2021年) /マリーンレイク・ロード、アルバータ州ジャスパー国立公園(2022年)
特急サロベツの車窓、北海道(2019年)/フェリーの窓、ブリティッシュコロンビア州ホースシューベイ(2019年)
遊ぶ少年、金沢市鈴木大拙館(2017年)/遊ぶ子供と山火事の煙、ブリティッシュコロンビア州ノースバンクーバー(2018年)
愛の泉、京都市嵐山(2018年)/遊覧船、アルバータ州マリーンレイク(2022年)
-
- 1
- 2
この記事に関連するニュース
-
坂井真紀「両国のキャンディーズ」仲良し女優らとの3ショットに「似てる」「眼福」「可愛いお3人」の声
スポニチアネックス / 2024年11月21日 11時38分
-
カナダで初の鳥インフル感染疑い、10代患者が重体
ロイター / 2024年11月13日 15時30分
-
カナダ西海岸の港湾閉鎖続く、労使交渉に進展の兆しなく
ロイター / 2024年11月6日 8時53分
-
カナダのブリティッシュコロンビア州議会選、保守党躍進も与党・新民主党が辛勝(カナダ)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年11月5日 1時0分
-
第17回温室効果ガス制御技術国際会議がアルバータ州カルガリーで開催(カナダ)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年11月1日 0時45分
ランキング
-
1“長距離ミサイル攻撃”駐日ロシア大使が批判…西側諸国が「露と戦うということ」
日テレNEWS NNN / 2024年11月21日 18時11分
-
2ロシアがわずか1000km先にICBM発射情報、アメリカへ「核攻撃いとわない」警告か
読売新聞 / 2024年11月21日 20時1分
-
3対人地雷供与はロシアの戦術変更に対応するため 米国防長官
AFPBB News / 2024年11月21日 14時9分
-
4ザビエルの遺体に祈り、インド 10年に1度の一般公開
共同通信 / 2024年11月21日 19時49分
-
5ウクライナ和平案、ロシアは現実的なものなら検討=外務省報道官
ロイター / 2024年11月21日 18時33分
複数ページをまたぐ記事です
記事の最終ページでミッション達成してください