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再会した幼馴染と現在の夫の間で...映画『パスト ライブス』、胸が張り裂けそうなエンディングの謎

ニューズウィーク日本版 / 2024年4月5日 19時14分

ラストシーンでは、歩道で向き合うノラとヘソンが恍惚とした表情で見つめ合い、空港行きのタクシーを待つ姿が映し出される。2人は無言で熱い抱擁を交わし、最後にヘソンがノラに言う。「じゃ、また(来世で)会おうね」

主演のリーはソン監督(右)の体験をスクリーンに再現した COPYRIGHT 2022 ©TWENTY YEARS RIGHTS LLC. ALL RIGHTS RESERVED

昔の自分に「さよなら」

ヘソンを乗せたタクシーが走り去ると、ノラはとぼとぼとアパートへ帰る。建物の前では夫のアーサーが待っていた。ノラは彼に抱き付き、泣きじゃくる。

「ノラは、(昔の自分に)さよならを言う必要性に気付いていなかったと思う。でも思い切り泣いたことで、12歳の時には言えなかった『さよなら』を言えたのだろう」

ちなみにアーサーも、このシーンで「彼なりのハッピーエンド」を迎えた。少なくとも監督はそう考えている。

ノラが本当に結ばれるべき相手はヘソンなのではないか。アーサーはそんな疑念を抱き、時空を超えて何十年も続いてきた恋には「勝てっこない」と口走る。ある場面では、ノラが寝言では韓国語しか口にしないことを明かし、「君の中には僕の入れない世界があるみたいだ」と言う。

そんなアーサーも、ラストシーンで泣きじゃくるノラの姿を見て、これが自分の本当の妻なんだと気付く。「泣き虫だった12歳の少女が自分の家に帰ってきた」のだと。

今にして思えば、この映画の原点は自分自身の底なしの孤独感にあった、とソンは言う。あのバーに座り、自分の過去が自分の現在に語りかけるのを通訳していたときの感覚は誰にも理解できないと、当時は思い込んでいた。

「この場で、こんなふうに感じているのは自分だけだろう」と感じた瞬間に、この作品のインスピレーションが湧いてきたと彼女は言う。

しかし『パスト ライブス』を撮る過程で彼女の孤独感は薄れていき、主人公のノラと同じように、自分を取り戻すことができた。

「こんな感覚は自分だけのものだと思っていたけれど、本当は誰にもあると気付いた。過去に出会った誰かや、今そこにいる誰かが自分の姿を鮮やかに照らし出して、矛盾しているようだけれど真実の自分を見せてくれる。そんな感覚を、みんな持っているんじゃないか」

「あの夜から何年もたち、ようやく私は、こんな感覚を抱いているのは自分だけじゃないと気付いた」とも、ソンは言った。「自分の過去が現在や未来に語りかけてくるのを眺めている感覚は、きっと誰にでもある。そう思えてからの私は、もう孤独をあまり感じなくなった。本当の自分に戻る女性を描いた映画で、私自身も自分を取り戻せた。これってすごいと思う」

本作はサンダンス映画祭で絶賛され、アカデミー賞でも作品賞と脚本賞にノミネートされていたが、惜しくも受賞は逃した。「この映画に関わってくれた多くの人たちの人生と時間を両肩に背負っている感じ」と語っていたソンは、悔しい思いをしているに違いない。でも前を向こう。だって(来世ではなく今生に)次作があるのだから。



スー・キム


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