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自民党の裏金問題に踏み込めないのも納得...日本が「森喜朗の国」になった経緯とは

ニューズウィーク日本版 / 2024年4月6日 18時26分

「日本のプーチン」は柔道でなくラグビーがお好き? AI GENERATED ART BY NEWSWEEK JAPAN VIA STABLE DIFFUSION

<新聞15紙を読み比べる政治ウォッチャーのプチ鹿島さんが森元首相が権力を掌握した歴史を振り返ると、ロシアのプーチン大統領もびっくりの巧妙さが浮かび上がりました>

ロシア大統領選で「圧勝」したというプーチン。彼は2000年の大統領就任後、首相時代を含めおよそ四半世紀も実権を握り続けている。この事実に「まぁロシアはねぇ」とあきれた感じになる方も多いだろう。私もそうだった。でもハッと気付く。「日本も似たようなものでは?」

思い出してほしい。プーチンの就任年に、日本では森喜朗が首相になった。以降の日本はずっと森の影響下に置かれていないだろうか。森は政界を引退したが自民党最大派閥の安倍派(旧・森派)では今も影響力を誇っている(一応安倍派は解散したことになっているが)。そして森は東京五輪2020では、開催直前まで五輪・パラリンピック組織委員会会長として君臨していた。

なんでこんな事態になったのだろう。首相としての森は1年で辞任せざるを得ないほどの低支持率だった。その反動で「自民党をぶっ壊す」と叫んだ小泉純一郎首相は異常な人気を博した。結局、小泉がぶっ壊したのは自民党でなく竹下派(小渕恵三が引き継いだ平成研究会)の天下だったと世の中が気付いたとき、既に清和研(清和政策研究会、安倍派)が自民党の主流派だった。なんのことはない、小泉の怒りは怨念で、単なる党内の権力闘争だったのだ。

裏金も五輪の汚職も森がキーマンだが...

小泉の後も安倍晋三、福田康夫、また安倍と清和研の時代が続く。清和研の「オーナー」は森だから、森の影響力が今日まで長く保たれた。プーチン顔負けの巧妙すぎるトップの居座り方だ。いや、世論の支持なくとも25年近く、しかも現在は選挙の洗礼も受けず影響力を保っているのだ。プーチンも感心するのでは。

そして現在、安倍派は裏金問題がバレて、東京五輪では汚職疑惑が噴出。どちらも全容の解明には森から話を聞くしかないと思うのだが、そうはなっていない。3月末には

「森喜朗氏側、既に裏金聴取 自民、関与なしと認定」(共同通信)

というニュースが流れた。

「水面下で話を聞き取っていた」というのがなんとも茶番ですごい。それ、どうとでも言える密室談義でしょ。まさに森らしさ全開だ。森が首相になったときも密室だった。00年4月に小渕首相が緊急入院した際、政権幹部「5人組」の協議で森首相が誕生した。その経緯は密室政治だと批判を浴びた。今回もまた同じ。

森は組織委会長在任時「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかる」などと発言をし、世界をドン引きさせた。女性理事を増やす日本オリンピック委員会(JOC)の方針への私見を述べたというが、森はなぜ非難されたか分からなかっただろう。それまで密室でおじさん仲間にはウケていたに違いないからだ。

武道は礼に始まり礼に終わるが「森道」は密室で始まり密室で終わる。普通のおじさんならそれでいいが、森は一国の重大懸案のキーマン。なのに誰も踏み込めない。岸田首相も安倍氏亡き後、森に頼っていた弱みがあり及び腰なのは周知の事実だ。

森はかつて「神の国」発言でひんしゅくを買ったが、日本はずっと「森の国」なのである。そういえばプーチンとも仲が良かったな。



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