「無罪の推定」を無視する日本のマスコミ報道には違和感しかない
ニューズウィーク日本版 / 2024年4月6日 15時50分
ほとんどの場合は「警察や検察が説明したこと」ではなく、「捜査関係者への取材で分かったこと」といった表現で報道され、誰が、どの状況で語ったかは曖昧にされる。警察や検察はリスクを取らないからだ。
捜査中だが報じても問題のない情報がある場合は、警察や検察がどのマスコミも参加できる記者会見を開き、責任を持って説明するのが正しい方法だろう。「捜査中だから無理」と反論する人もいるかもしれないが、海外で行っていることを見れば無理ではないと分かる。
また、日本の弁護士は一部を除いて、ほとんどマスコミに話さない。世論に理解されないリスクがあると彼らは思っているのかもしれないが、結果的に警察・検察側の見方しか報道されない状況になっている。弁護団がもっと早い段階でマスコミに出れば、冤罪を防ぐことができるのではないか。
私は去年から、死刑が確定している袴田巌さんの再審を傍聴しているが、もし袴田さんの弁護団が数十年にわたってこれほど積極的にマスコミに説明してこなかったら、再審はなかったと思う。逮捕された人が必ずしも犯罪者ではないと理解されないのは、非常に危険なことだ。
西村カリン
KARYN NISHIMURA
1970年フランス生まれ。パリ第8大学で学び、ラジオ局などを経て1997年に来日。AFP通信東京特派員となり、現在はフリージャーナリストとして活動。著書に『不便でも気にしないフランス人、便利なのに不安な日本人』など。Twitter:@karyn_nishi
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