人類史上最速の人口減少国・韓国...状況を好転させる「唯一の現実的な方法」とは?
ニューズウィーク日本版 / 2024年4月16日 14時50分
経済政策と家族計画が両輪となって、韓国は出生率の高い国から低い国へと変身を遂げた。結果として、総人口に占める従属人口(年少者と高齢者)の割合は生産年齢人口に比べて減少した。こうした人口動態の変化は経済成長の起爆剤となり、それは90年代半ばまで続いた。生産性の向上と労働力の増加、失業率の緩やかな減少が相まって、GDPの成長率は年6~10%の高水準で推移していた。
おかげで今の韓国は世界有数の豊かな国となり、国民1人当たりGDPは3万5000ドルに上る。
韓国が貧しい国から豊かな国へと変貌を遂げたのは、少子化のもたらす「人口の配当」によるところが大きい。だが、この配当をもらえる期間は限られている。その期間を越えて少子化が続けば、その国には往々にして悲惨な結果が待っている。
出生率が0.72にまで落ち込んだ今の韓国では、死亡者の数が出生児の数を上回り、人口の減少が続いている。韓国統計庁によれば人口の自然減少分は、21年が5万7118人、22年が12万3800人、23年も12万2800人に上っている。
頼みの綱は外国からの移民
この傾向が続き、韓国が大量の移民を受け入れなければ、いま約5100万人の人口は今後40~50年で3800万人を割り込むだろう。その一方、65歳以上の高齢者の割合はますます増えていく。
韓国の65歳以上の人口は、00年には全人口の7%未満だった。しかし今は国民の18%強が高齢者だ。高齢者人口は25年までに全体の20%に達すると予測され、67年には46%という前代未聞のレベルに達する可能性がある。その場合、生産年齢人口は65歳以上の人口よりも少なくなる。
こうした悪夢を防ぐため、韓国政府は子供を産む夫婦に経済的なインセンティブを与え、子育て世帯に支給する育児手当も増額する方針だ。保守派の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領は就任当初から出生率の向上を重点政策として掲げ、対策チームも立ち上げている。企業や自治体の中には、社員や住民に子供が生まれたら1億ウォン(約1100万円)を支給するという思い切った支援策を独自に打ち出したところもある。
だが今のところ、少子化対策はほとんど効果を上げていない。06年以来、韓国政府は出生率を上げるためのプログラムに約2800億ドルを投じているが、いい結果にはつながっていない。
韓国の出生率に上昇の兆しが全くと言っていいほど見えないのは、人口学者が「少子化の罠」と呼ぶ現象だ。一般論として、ある国の出生率が1.5を下回ると、そこから大幅に回復させることは非常に難しくなる。
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