ウクライナ悲願のF16がロシアの最新鋭機Su57と対決するとき
ニューズウィーク日本版 / 2024年5月22日 14時24分
このように性能面で物足りない点はあるものの、Su-57(NATOのコードネームでは、「重罪犯」を意味する「フェロン」)は、F-16より優れた点もいくつかある。防衛関連情報の専門誌「ナショナル・インタレスト」の報道によると、第5世代の「フェロン」は、地上レーダーとの連係が可能だという。これにより、第4世代と比べて、最初のミサイル発射が速いというアドバンテージがある。
一方、アメリカのF-16は、長きにわたる輝かしい戦歴を持っている。その多用途性と操縦性で知られ、1970年代末から、多くの国の空軍で定番の装備となっている。
当初は昼間軽量戦闘機として開発されたF-16だが、その後は、全天候型の多用途戦闘機に進化し、成功を収めている。F-16は、その柔軟な対応力、そして高度なレーダーやアビオニクス、兵器システムの搭載をはじめとする長年にわたる幅広い機能向上によって、現代の空中戦の要求に応える、強力な戦闘機としての地位を築いた。
F-16は、マッハ2(時速2448キロ)の速度で飛び、最高で高度5万フィートまで運用が可能だ。戦闘行動半径は、内蔵燃料タンクを使用した場合は約550キロ。さらに外部燃料タンクを追加した場合の最大航続距離は約3220キロを超える。
F-16には、AN/APG-66のような航空機用の高度なレーダーシステムも搭載されており、約96キロ以上の距離にわたって、空域と地上、両方の標的を追跡できる。また、ソビエトのMiG-29やSu-57と比べるとサイズが大きく多様な兵器を搭載できる。
今回供与されるF-16は、旧ソ連製で老朽化が著しいウクライナの航空機を置き換えることになる。
支援インフラが必須
一方で、アメリカ会計検査院による2023年の報告書では、F-16を「空軍機の中でもメンテナンスが最も難しい機種の1つ」と位置付けている。この事実から、元米海兵隊大佐で、戦略国際問題研究所(CSIS)安全保障プログラムの上級顧問を務めるマーク・カンシアンは、ウクライナ軍が実際にこの戦闘機を運用するのは、かなり難しい可能性があると指摘する。
「F-16がその威力を発揮するためには、ウクライナ軍は大々的な支援・輸送インフラを構築し、維持する必要がある」と、カンシアンは本誌に語った。「これには、約9カ月を要するパイロットの訓練に加えて、メンテナンス、燃料補給、弾薬供給のためのシステム構築が含まれる」
「即座に戦局を変えるゲームチェンジャーにはならないだろう」と、カンシアンは付け加えた。
(翻訳:ガリレオ)
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