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指示出しても「聞いてませんでした」...伝達ミスはコマンドの出し方を変えれば「攻略」できる

ニューズウィーク日本版 / 2024年6月4日 11時55分

しかし、その内容がすべての店舗に100%伝わり、スタッフの行動が変わるということは、まずありません。翌週、各店を見てみると店舗によってすすめ方が違うなど、ばらつきが生じているのです。
  
伝言ゲームを思い出してみてください。最初の話者が話した言葉が複雑であったり、間に入る人が増えたりすれば、自ずと最後まで正確に伝える難易度が上がります。そもそもこの伝言ゲームは、「言葉は正しく伝わらない」という前提があって、成立しているゲームです。

社内での伝達も、こうした前提に立つことが大切です。たとえば、社長が「○月×日までに全店で必ず○○するように」と部長に通達を出すとします。仮にこの伝言が70%の正確さで伝わるとして、この70%のうち100%が部長からその次の課長へ伝わればまだいいですが、人間の伝達能力は完璧ではありません。

社長で70%であれば、部長もせいぜい同じレベルでしょう。すると社長の言葉が課長に届くときには70%のさらに70%、すなわち49%しか伝わらないことになります。

この要領で7割程度で伝わっていくと考えると、課長が主任に伝える頃には34%、主任が現場のメンバーに伝える頃には24%。これでは、社の決定が現場で再現されるわけがありません。

このように、伝達をくり返すごとに正しく伝わる内容が減少し、社長が支店の巡回に来た時「通達したことが、全然守られていないじゃないか」となってしまいます。そしてその時、矢面に立たされるのは、そうです、中間管理職の皆さんなのです。

 
現場に伝達すべきことを、「これ、現場に落としといて」と表現することがあります。ピラミッド型の組織において、上(経営者)から下(現場)に情報を下すというイメージなのでしょう。

しかし、情報というのは重力に従って木からリンゴが地面に落ちるように、自然と下りていくわけではありません。 何度も何度も「これでもか」というほど伝えて、ようやく浸透するかしないかというものです。

では、どうすれば「伝わる情報伝達」ができるのでしょうか。

1971年に、アルバート・メラビアンという心理学者が提唱した法則があります。人間同士のコミュニケーションにおいて、「言語情報が7%、聴覚情報が38%、視覚情報が55%の割合で相手に影響を与える」という心理学上の法則で、「メラビアンの法則」と呼ばれています。つまり、情報伝達率以前の問題で、言語だけで物事を伝えることに、そもそもの無理があるということです。
  
もう一つ、われわれのクライアントである、とある高級飲食店の事例を紹介します。そのお店では、外国人スタッフに向けて、お客様へお水を提供する際、どうすれば丁寧な印象を与えられるかということについて、熱心に指導をしていました。

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