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ライシ大統領の死後、イランと中東情勢はどう変わるのか?

ニューズウィーク日本版 / 2024年5月28日 15時10分

ハメネイとしては、今のイランは「万事順調」と言いたいのだろう。しかし現実のイラン経済は深刻な状況にあり、地域の緊張も高まっている。国際社会の制裁も効いている。通貨の価値はひどく下がっており、18年当時に比べて93%も安くなっている。インフレ率は公式発表でも40%超で、失業率も高い。特に若年層では深刻だ。

体制側は一貫して、身柄の拘束や脅迫を通じて抗議を抑え込もうとしている。だが改革を求める声は今も各方面から上がっている。特に女性へのヒジャブ着用強制に反発する22年秋以来の抗議行動は激しかった。当局は中道派の声も封じようとしているが、これには世論の批判も強い。今では前大統領のハサン・ロウハニも批判する側に回っている。

■後継者は誰か

大統領が任期半ばで死亡した場合、憲法の規定では、第1副大統領が最高指導者の同意を得た上で50日間、大統領職を代行する。規定上、現職の第1副大統領モハマド・モクベルが大統領代行を務める。そして、この暫定期間の最終日に大統領選挙が実施される。

この選挙の手続きは通常よりも簡略化される。12人で構成する監督者評議会が候補者を審査し、ふさわしくないとされた者は立候補できない。だから中道派や改革派の有力候補は事前に排除され、結局は保守派と強硬派の一騎打ちとなる。

今後は両派が、最高指導者の「お墨付き」を得ようとして争うだろう。ライシが大統領になってからは強硬派の天下となり、保守派は脇に押しやられていた。しかし、現時点で強硬派には有力な候補がいない。

対して保守派には国会議長のモハマド・バケル・ガリバフがいる。25年も前から政界の第一線で活躍してきた人物だが、過去に2回の大統領選で敗退しているのが難点で、強硬派に受け入れられるとは思えない。

■ライシの死は中東および世界の安定にとってどんな意味を持つか

体制側としては、政局が落ち着くまで余計な混乱は避けたいところだ。死亡したアミール・アブドラヒアン外相の後継者も早く決めなければならない。彼はイラン政府の主張を世界に発信し、経済制裁の影響を少しでも和らげるために重要な役割を果たしてきた。

気がかりなのはイスラエルの出方だ。あの国はガザ地区での戦闘を続ける一方、内政面ではネタニヤフ首相の進退をめぐって緊張感が高まっている。だからこそ、この機に乗じてイランの関係先に対する乱暴な攻撃に打って出る恐れがある。シリアにいる革命防衛隊の指揮官や、レバノンにいるシーア派武装組織ヒズボラ幹部の暗殺などだ。

Scott Lucas, Professor of International Politics, Clinton Institute, University College Dublin

This article is republished from The Conversation under a Creative Commons license. Read the original article.




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