与党は敗北確実、野党党首はカリスマ性なし...イギリス総選挙決定で明らかになったこと
ニューズウィーク日本版 / 2024年5月30日 15時45分
前回、保守党に投票した人々の多くは、今度は労働党の政策が「中道」に近いと考えるだろう。
保守党が中道寄りに戻ったりすれば、保守党の右寄り具合が足りないと言って保守党をつぶしにかかっているように見える新党「リフォームUK」(旧ブレグジット党)からの脅威にさらされる。リフォームUKが議席を獲得する可能性はないが、僅差の選挙区で保守党の票を食うには十分であり、結果として保守党に大ダメージを与えるだろう。
4) 保守党は多くの経験豊富な政治家を失っている。僕は以前、63人の保守党議員が再選出馬を見送りそうな情勢になった際に、「人材流出」について記事に書いた。今ではそれが77人に膨れ上がっている。まるで「沈みゆく船から脱走するネズミの群れ」のようだ。
悪あがきで「兵役」復活政策まで浮上
5) 保守党はただただ、のたうち回っているようにも見える。悪あがきは悪い政策を生む。保守党が(兵役・社会奉仕活動を義務付ける)「ナショナル・サービス」の復活を提案しているというニュースを最初に知ったとき、僕は文字通り自分が誤解しているのだと思った。必ずしもひどい考えだと思うからではなく、慎重に検討する必要がある(そしておそらくは棚上げされることになる)たぐいの政策だからだ。どうせ選挙で負けるんだから「試すだけでもやってみよう」との勢いだけで何の計画もなしに発表するようなたぐいの政策ではない。
6) これは荒っぽい推測だが、投票日が近付いて保守党が一向に差を縮められないとなったら、保守党は中傷キャンペーン――スターマー党首とアンジェラ・レイナー副党首がBLM(ブラック・ライブズ・マター=黒人の命は大事)抗議行動の真っ最中に「膝をついている」写真を掲げる――をするようになるのではないかと、僕はいぶかしんでいる。
これは、一般的なイギリス人が多少のことに目をつぶってでも保守党に投票する理由の1つになりかねない。市民の混乱を引き起こし、ロックダウンの規制を破り、「制度的人種差別」だの「白人特権」だの「マイクロアグレッション(無自覚の小さな差別行為)」だのといったひねくれた論理に基づいた抗議行動に、共感を示してこうべを垂れる首相なんて、決して望まれないからだ。
1997年に保守党が、悪魔のような目をしたトニー・ブレアに「ニューレイバー、新たな危険」の文字を掲げたポスターを作ったことは有名だ。その戦略はいまいち弱くて、うまくいかなかった。でも今回は、スターマーが膝をつく実際の写真を見せて、その意味するキャッチコピーを勝手に有権者に想像させればいいだけなのだ。
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