習近平はプーチンの足元を見て、天然ガスを半値で買い叩いている
ニューズウィーク日本版 / 2024年6月4日 18時2分
ブレンダン・コール
<ウクライナ侵攻で欧州市場に天然ガスが売れなくなったロシアに「同盟国」中国が手を差し伸べたと思うのは間違い。習近平はロシアに儲けを出させるほど甘くなかった>
ウクライナ侵攻のせいで買い手がなくなったロシアの天然ガスを、大量に買ってくれる国があるとしたら中国ぐらいかもしれない。ウラジーミル・プーチン大統領は本音では、制裁で欧州市場を失った分を取り返したいのだが、彼の言い値は中国にはとても通らないだろうと、プーチン政権下でかつてエネルギー省次官を務めた人物は、本誌に対してそう述べた。
【動画】さすがに無謀...中国製「ゴルフカート」で進軍するロシア兵、地雷で吹き飛ばされる 衝撃の瞬間が公開
「中国へのガス輸出でロシアが利益を上げられないのは明らかだ」。プーチンが大統領として最初の任期を務めていた2002年5月〜10月にかけてエネルギー省次官を務め、現在はロシア国外で活動する野党政治家のウラジーミル・ミロフはそう語った。
ミロフによれば、上場企業では世界最大級の天然ガス会社であるガスプロムが、ロシア経済、そしてプーチンが率いる軍産複合体にとっての収益の柱であり続けられる可能性は「ほぼなくなった」という。
プーチンはしきりに、中国で自身と同じ国家元首の立場にある習近平主席との緊密なつながりをアピールしてきた。また、2024年5月に中露首脳会談が行なわれたあとには、2023年の両国間の貿易高は2400億ドルと史上最高に達した。その上昇幅は、前年の2022年と比較して25%以上になっている。
頼れるのは中国だけ
しかし中国政府は、「シベリアの力2(アルタイ・ガス・パイプライン)」に関して、かなり厳しい価格をロシアに突き付けている。このパイプラインは、かつてヨーロッパにガスを供給していたロシア西部のガス田と中国市場を結ぶもので、ロシアとしては、今ではほぼ失われたヨーロッパという大口顧客を埋め合わせてもらうためのプロジェクトだ。
ガスプロムは2022年半ば、ヨーロッパ向けのガス供給を制限した。これは、ウクライナの支援国に対して圧力をかけ、これらの国々のロシアへの経済制裁やウクライナ支援に報復することを狙ったプーチンの企てだった。だがEU諸国は、オーストリアやハンガリーを除いて代替のガス供給源を見つけられた。
だが中国が購入の意向を示しているのは、「シベリアの力2」の年間計画供給量である500億立方メートルのごく一部だという。これは、英フィナンシャル・タイムズ紙が、この件に詳しい3つの情報筋の話として伝えたものだ。
-
-
- 1
- 2
-
この記事に関連するニュース
-
プーチン大統領がベトナム訪問、エネルギー分野など2国間関係を深化(ベトナム、ロシア、米国)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年6月28日 10時55分
-
イランへのガス供給で覚書 ロシア政府系企業
共同通信 / 2024年6月27日 6時14分
-
2023年の中東での天然ガス生産1.6%増、イランが世界3位、LNG輸出はカタールが世界2位(中東、サウジアラビア、イラク、アラブ首長国連邦、カタール、オマーン、イラン、日本、中国、米国、ロシア)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年6月21日 13時45分
-
ウクライナ民間企業、米ベンチャーとLNG購入契約を締結
ロイター / 2024年6月14日 11時14分
-
中国とロシアの送ガス管契約が暗礁に 中国が「無理な要求」=FT
ロイター / 2024年6月3日 9時11分
ランキング
-
1精彩欠いたバイデン氏、NYタイムズが「強力な人物必要」と撤退促す…トランプ氏「年齢ではなく能力の問題」
読売新聞 / 2024年6月29日 18時13分
-
2ロシア、短・中距離核ミサイルの生産再開へ プーチン氏が表明 米国への対抗と主張
産経ニュース / 2024年6月29日 20時30分
-
3焦点:少年院でギャングが勧誘、スウェーデンで増える銃犯罪
ロイター / 2024年6月30日 7時54分
-
4来月の日欧の共同訓練批判=ロシア
時事通信 / 2024年6月29日 16時21分
-
5北朝鮮の朝鮮労働党中央委員会が金正恩総書記の生母・高容姫氏の記録映画や映像の破棄を命令 日本生まれの出自を懸念か
NEWSポストセブン / 2024年6月30日 7時15分
複数ページをまたぐ記事です
記事の最終ページでミッション達成してください
![](/pc/img/mission/mission_close_icon.png)