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メキシコ初の女性大統領に待ち受ける難題...殺害された候補者や立候補予定者は30人以上の「歴史的選挙」

ニューズウィーク日本版 / 2024年6月10日 16時35分

彼は自身の政権を、メキシコを解放した3つの革命(スペインからの独立戦争〔1810~21年〕、政教分離を定めたレフォルマ戦争〔1857~61年〕、30年にわたる独裁に終止符を打ったメキシコ革命〔1910~20年〕)に続く「第4次変革」と位置付けた。

ロペス・オブラドールに言わせれば、新自由主義政策と腐敗に汚染された民主化移行期は、メキシコ史への裏切りだった。彼は選挙期間中も、法律で禁じられている対抗勢力への批判を繰り返した。

ロペス・オブラドールの支持率はいまだ65%。彼が実現させた低所得者向けの奨学金や年金などの改革は、多くの国民に高く評価されている。シェインバウムの選挙戦は、ロペス・オブラドールの人気に支えられていた。それだけに、その影が今後の政権運営に付きまとうことになる。

麻薬戦争によって命を落としたメキシコ人は、18年時点で約22万7000人に達していた。ロペス・オブラドールは就任当初、軍を治安任務から撤退させると約束し、「銃弾ではなく抱擁を」と繰り返した。

だが、その方針はすぐに変更された。彼は連邦警察を解体し、代わりに主に軍人で構成される「国家警備隊」を創設。その指揮権を大統領直轄の国防省に移管し、文民統制が及ばないようにした。

ロペス・オブラドールは軍の忠誠心と誠実さを信頼できると訴えたが、法的手続きを経ない処刑や汚職など軍が抱える疑惑を考えれば、その主張は極めて疑わしい。

5万人以上が行方不明

しかも、彼の任期中の過去6年間にメキシコ国内の暴力は空前のレベルに達した。

18~23年の殺人の発生件数は17万1000件を超え、そのうち約5000件がフェミサイド(ジェンダーに基づく暴力による女性の殺害)だった。この期間の行方不明者も5万人以上。これは1時間ごとにおよそ1人のペースだ。

シェインバウムは治安統制への軍の起用を否定している。一方で、国家警備隊を国防省の管轄にしたロペス・オブラドールの判断を支持するとも語っている。

ロペス・オブラドールは大統領への権限集中を徐々に推し進めた。任期後半、野党陣営が法案への不支持を表明すると、与党勢力は野党を無視し、小規模政党の協力を得て改革案を可決した(この立法プロセスは後に最高裁に違憲とされた)。

ロペス・オブラドールはさらに、憲法記念日の2月5日に司法制度の抜本改革を目的とした一連の憲法改正案を議会に提出した。可決に必要な過半数の票を集められなかったが、シェインバウムは憲法改正の実現を約束している。

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