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保守強硬派の内紛...ライシ大統領死後、イラン大統領選の行方は?

ニューズウィーク日本版 / 2024年6月11日 14時0分

その中でも突出しているのが、イラン革命防衛隊出身のモハマド・バケル・ガリバフ国会議長が率いる「イスラム革命勢力連合評議会」だ。ガリバフは05年と13年の大統領選に立候補。17年にも立候補を表明したが撤退した。

今年5月28日に議長に再任された数日後に、ガリバフは再び大統領選への立候補を表明した。ガリバフと親族は賄賂と汚職で悪名高いが、本人はハメネイと近い関係にある。

これらの派閥は政権内のさまざまな保守勢力を代表しており、それぞれ独自のアジェンダと将来のビジョンを持っている。権力と経済的利益を手中に収めたい彼らは、対立を隠すつもりもない。相手を弱体化させる戦略として、例えばソーシャルメディアを使って汚職を告発している。

革命防衛隊の不安要素

保守強硬派内の衝突は、政情をさらに不安定にする。イランは目下、国内外で厳しい試練に直面している。

国内では、22年9月にクルド系イラン人女性マフサ・アミニ(当時22)がヒジャブで頭部を適切に覆っていなかったとして道徳警察に逮捕され、拘束後に急死したことを発端に、全土で大規模な抗議デモが勃発。ライシ政権は深刻な正統性の危機に直面していた。社会の混乱は経済的苦境によって悪化し、国民の間に不満が広がっている。

対外的にはイスラエルやサウジアラビアなど、地域の仇敵と対峙している。また、厳しい経済制裁により、アメリカとその同盟国からの大きな圧力にも直面している。

社会不安が広がり、政権は革命防衛隊や保守派民兵組織のバシジなどによる治安の取り締まりに、かつてないほど依存するようになった。ただし、革命防衛隊のような重要な経済・治安組織も一枚岩ではない。保守強硬派で構成される上層部は、それぞれが異なる派閥を明示的または暗黙的に支持している。

保守強硬派内の争いが激化すると、治安組織が分断される可能性が高まる。彼らエリート派閥は、自分たちの権力を拡大してライバルを排除するゼロサムゲームを展開し、不安定さに拍車をかけている。これはイスラム共和国の存続に深刻な脅威となりかねない。

1979年にイスラム共和国を樹立した革命の最高指導者ルホラ・ホメイニの死後35年を記念する演説で、ハメネイはあからさまな内紛に警鐘を鳴らした。

「悪口や誹謗中傷をまき散らすことは、前進の助けにならず国の評判を傷つける」とし、さらに「選挙は名誉を懸けた壮大な場であり」「権力を手に入れるための戦いの場ではない」と強調した。

一連の権力闘争の結果は、イランの政治の軌道を決めることになる。イラン政権は、より広い地域安全保障の複合体において重要な役割を担っている。このことを考えれば、内紛の影響は国境を越えて大きく広がるだろう。

Afshin Shahi, Associate Professor (Senior Lecturer) in Middle East Politics & International Relations at Keele University, Keele University

This article is republished from The Conversation under a Creative Commons license. Read the original article.




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