ウクライナ侵攻後、難民危機と闘う女性たちの「リアル」
ニューズウィーク日本版 / 2024年6月13日 15時50分
ウクライナ南東部ザポリッジャ州で警戒に当たる兵士(今年5月) UKRINFORMーNURPHOTOーREUTERS
ウクライナでは、多くの学校や企業や保育施設が砲撃で閉鎖され、仕事に就くのが難しい。一方、国外に出れば言葉の壁があり、保育施設は不足し、難民の権利に関する情報は流れてこない。そのため人並みの生活水準を維持するのは困難で、女性は搾取の対象になりやすい。
しかも東欧諸国では、女性やLGBTQI+(性的少数者)への締め付けが厳しくなっている。ポーランド、ハンガリー、ルーマニアでは人工妊娠中絶の権利が制限された。DV被害者支援の予算は削減され、ジェンダー平等を訴える組織は弱体化し、LGBTQI+に対する暴力の増加も懸念されている。
ウクライナ侵攻が始まると、モルドバのRCTVメモリア、ポーランドのマールティンカ財団、ウクライナのNGOフルクラムなど女性主導の組織は速やかに活動範囲を広げた。ボイスのアンケートでは78%が、従来の任務を遂行しつつ人員を増やして活動を拡大したと回答した。
こうした組織が難民支援に手を広げたのは、行きがかり上やむを得なかったからであり、また大規模な国際NGOや国連機関より細かい文化の違いをくみ取り、専門知識と信頼性を生かして迅速に動くことができたからだ。だが人手は足りず、資金援助は途切れがちで、蓄えを切り崩しボランティアに頼るしかなかった。
ウクライナは22年、人道支援金として約300億ドルを受け取った。だがNPO「ジャーナリズムおよび社会変革研究所(IJSC)」の報告書によれば、女性の権利擁護を掲げる組織、運動、政府機関に渡ったのはこのうちの1%にも満たない。
公的援助を受けたくても、煩雑な手続きとやたらと時間を食うお役所仕事がネックだと、回答者は述べた(ある国際NGOは申請者に30もの書類の提出を義務付けた)。
多くの組織や団体は、自分たちの地域ニーズに対応する傍ら、資金援助の申請手続きをする時間の確保に苦労している。国連機関や国際NGOのような大口の資金提供者から信頼されていないと感じることも多い。適切な説明と報告のシステムを持っていないと見なされたり、リプロダクティブ・ライツ(性と生殖に関する女性の権利)やLGBTQI+の権利に対する姿勢が政治的すぎて、公的支援の対象にふさわしくないと判断されたりする。
ウクライナだけの問題ではない。アフガニスタンからスーダンまで、世界各地の紛争地も同じ状況だ。
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