パレードの裏に思惑が...中国共産党がニューヨークでひそかに進める「工作」とは?
ニューズウィーク日本版 / 2024年6月13日 14時23分
ディディ・キルステン・タトロウ(本誌米国版・国際問題担当)
<2022年から毎年5月に開催されているアジア・太平洋系住民のためのパレード。「全ての人を歓迎」とする一方で、参加を許されない組織も多い>
アメリカの5月は、アジア・太平洋諸島系住民(AAPI)の伝統と文化をたたえる月だ。ニューヨークでも2022年から、アジア系のためのパレードが開かれている。
だが本誌が独自入手した文書によれば、このパレードを企画したのは、米政府に外国のエージェント(代理人)として登録されている企業のCEOだった。
この事実から、中国がアメリカ、特にニューヨークで影響力を拡大させる工作を仕掛けている疑いが浮上する。
過去にはエリック・アダムズ市長をはじめとするニューヨークの政治家が、中国共産党とつながりがある団体のメンバーから献金を受けていたことが分かっている。
今年のニューヨークのAAPIパレードは、5月19日にマンハッタンの6番街で行われた。全てのアジア系住民を歓迎すると、パレードは宣言した。
だが本誌が入手した文書によれば、主催者は政治的・宗教的に物議を醸す可能性がある団体を対象外としている。中国指導部に批判的な人々は、それが自分たちのことだと知っている。
チベット系、台湾系、香港系、そして中国政府を批判する人々は、このパレードがどれだけアジア系を代表しているのかと疑っている。彼らはパレードに招待されたことがなく、参加を申請しても認められない。
香港系住民の団体「ウィ・ザ・ホンコンナーズ」の創設者フランシス・ホイ(許穎婷)も、その1人だ。
彼女はパレードへの参加を申し込んだが、2週間待たされた末に受け取ったのは追加情報の提出要請だった。「私たちの申請を断る理由を探すために時間稼ぎをしていたことは明らかだ」と、ホイは言う。
本誌が米情報公開法の下で請求した総計数百ページに及ぶメールによれば、ニューヨークのAAPIパレードは中国語メディア「星島日報」のCEOロビン・ムイ(梅建國)が企画した。
同社は外国代理人登録法の下、米司法省から登録を命じられている。チャイナタウンで旧正月イベントを主催するスティーブン・ティン(田士銳)が率いる団体「ベター・チャイナタウンUSA」も協力した。
ムイは本誌の取材に対し、パレードの企画は長年にわたって何度も申請してきたが、アダムズが市長に就任してようやく認められたと語った。
「ほかの民族グループは毎年パレードをやっているのに、なぜアジア系だけはないのかと、市に訴えていた」と、ムイは言う。「このパレードは中国系だけでなく、アジア系全てのパレードだ」
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