オオカミと比べて鈍いペット犬の感情表現、その理由とは?
ニューズウィーク日本版 / 2024年6月21日 8時30分
リディア・スミス
<人間の飼育や品種改良が犬の感情表現を妨げている>
ペットの犬は感情表現が下手? 英ダラム大学の研究で、人間による飼育や品種改良が犬の感情表現に影響していることが明らかになった。
オンライン誌サイエンティフィック・リポーツに掲載された論文によると、現代の犬は祖先のオオカミほど好意と恐怖の表情をつくり分ける能力が高くない。意図的なブリーディング(品種改良)で垂れた耳や短い鼻など人間がかわいく思う特徴が強まり、さまざまな感情の表情がつくりにくくなったことが一因だ。
今回の研究では、捕獲したオオカミと飼い犬の動画を比べ、彼らがある状況下でどんな反応をするか、他者とどうコミュニケーションを取っているように見えるかを調べた。
研究チームが取り上げたのは怒り、不安、好奇心、恐怖、友好、幸せ、興味、喜び、驚きの9つの感情表現。オオカミは他者の顔の動きから、これらの感情を71%の精度で読み取れることが分かった。
これが飼い犬の場合は65%まで低下。特に、友好といった正の感情と、恐怖など負の感情の区別が難しかった。
犬が混乱すれば、人間も犬の恐怖や攻撃的な行動を友好的なものと誤解しかねず危険だ。犬同士のけんかの危険性も高まる。
例えばオオカミは怒っているとき、約80%の確率で鼻にしわを寄せ、上唇を上げる。しかし、飼い犬が同様の動きをする確率は34%にすぎない。
短頭種のパグやフレンチブルドッグなどの顔の特徴がコミュニケーションに影響することも分かった。垂れた耳や大きく下がった唇などは、犬の表情と感情が一致していないように見えるケースの80%近くと関係があった。
論文の筆頭著者であるダラム大学生物科学部の研究者エラナ・ホブカークは、「オオカミがいかに複雑なコミュニケーションができて知覚が鋭いか、犬の家畜化が人間との絆にどう影響を及ぼしているのかが分かった」と語る。飼い犬がオオカミよりも多く鳴くのは、それで感情表現を補うのかもしれないという。
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