電気自動車「過剰生産」で対立するG7と中国──その影にジンバブエのリチウム鉱山開発ブーム、現地でいま何が?
ニューズウィーク日本版 / 2024年6月20日 20時55分
その開発で先行するのが中国企業だ。
中鉱資源集団(Sinomine)が2022年2月にリチウム鉱山の経営権を取得したのを皮切りに、中国企業は今年3月までにこの国のリチウム開発に約28億ドルを投資したとみられる。
中鉱資源集団の広報室によると、その所有するリチウム鉱山の一つMasvingoだけで埋蔵量は約6500万トン(現在の全世界の年間生産量は10万トン程度)にのぼる。
そのデータには疑問も残るが、少なくともジンバブエでリチウム生産が活発化していることは確かで、2022年に約7060万ドルだった輸出額は2023年には6億7400万ドルにまで急増した。
そのほとんどは中国向けの輸出だったとみられている。
先進国が出遅れる理由
これに対して、もちろん先進国企業の活動もゼロではなく、例えばオーストラリア企業Metal Groveもジンバブエでリチウム開発に参入している。
しかし、それでも先進国には出遅れが否めない。
その最大の理由は、欧米が2000年代からこの国に経済制裁をしいてきたことにある。
ジンバブエでは1999年、白人所有地を政府が補償なしで収用できる法律が可決した。
19世紀の植民地時代に入植したイギリス人などの子孫は人口の1%程度だが、ジンバブエ独立後も耕作可能地の半分近くを所有し続けてきた。黒人中心のジンバブエ政府は、これを取り上げてかまわないという法律を作ったのだ。
この問題はいわば植民地支配の遺産と呼べるが、白人財産の没収という事態を受けて、米英など欧米各国はジンバブエに対する経済制裁を発動した。
それと入れ違いのように、ジンバブエに急速に浸透したのが中国企業だった。
その結果、IMFのデータによると、ジンバブエの輸出額に占める中国向けの割合は8.9%(2022年)を占め、国別で最多である(輸入は17.9%)。
アメリカはジンバブエに向かうか
欧米とジンバブエの関係には変化の兆しもある。
ジンバブエ政府は欧米との関係改善を目指して2020年、財産を没収した白人に総額35億ドルの補償金を支払うことを約束した。これを受けて米バイデン政権は今年3月、2003年から続けた経済制裁の多くを解除した。
その前後からアメリカ企業の投資も増えている。ジンバブエ政府によると、2023年にアメリカから流入した対外直接投資(FDI)は1億7520万ドルにのぼった。
とはいえ、アメリカの大々的な参入には限界もある。制裁が全面的に解除されたわけではないからだ。
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