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なぜ「共感」は、生きづらさを生んでしまうのか...「伝える」よりはるかに強い「伝わる」の魔法の力

ニューズウィーク日本版 / 2024年6月27日 12時15分

共感はとても新しい力なので、共感に疲れてしまったときは、もう少し古くから続いてきた活動に立ち返ってみるのもいいと思います。例えば「呼吸」は生物が大昔からやってきたことです。自分が少し弱っているときには、呼吸にただ集中してみると、基本的な生命の安らぎを思い出すことができるかもしれません。西田幾多郎も、人生のさまざまな苦難を経験しながら、じっと座って自分の呼吸に関心を集めて、「呼吸するも一つの快楽なり」ということを言っています。

共感はとても新しい試みなので、諸刃の剣です。だからこそ開ける新しい世界もあります。自分の体調や状況次第で、共感は、用法と用量を守りながら、がいいと思います。

悩んだら、「いろんな生き物の意見」を聞けばいい

──悩むのは新しいことに挑戦している証拠だと聞くと、救われる面もあります。とはいえ、深い悩みを抱えたときには、どうするとよいのでしょうか。

どんなことでも「広く意見を募る」ほうが視野は広がりますよね。ある種の集合知によって、より多様な意見に耳を傾けたほうが、より賢明な選択ができる。その意味で、なにごとも人間の声だけを聞くのはリスクが大きいと思いますね。

人間は、地上を二本足で立って歩いている、とても特殊な生き物です。この時点で他の動物と比べても、すごく変な世界を見ているわけです。人間の意見だけを聞いていたら、偏るのは当然です。

自分が本当は何をしたいのかを知りたいときは、自分の体の声を聞くよりも、自分の体以外の声がたくさん聞こえる場所に行ってみることがおすすめです。川が流れていたり、鳥が鳴いていたりする場所に。

たとえば「いまの仕事、辞めたほうがいいのかな」と悩んでいるときに、自分の体の声だけ聞こうとしても、出口は見えにくい。むしろ、いろんな生き物の意見が飛び交う中に身を置いてみるくらいのほうがいい。そうするとそもそも、「仕事を辞めたほうがいいのか」という問いの立て方自体が間違っていた、なんて気づけることもあるかもしれない。

探究とは、「掴めないものがある」ことを示すこと

──最後に、これから森田さんが探究を深めたいテーマは何ですか。

無限の概念は面白いもので、「無限」そのものを掴むことはできなくて、むしろ「無限を掴めていない」という仕方でしか無限は表現できない。たとえば、「1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11‥‥‥」とずっと数えていく。どんな数え方でもいいのですが、こうしてどこまで行っても「数え尽くせない」ことを通して、僕たちは無限を感じることができる。探究とは僕にとって、無限に向かっていく営みです。考え尽くせない、ということを考えるためには、ひたすらどこまでも考え続けていくしかない。

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