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「絶不調」バイデンを深追いしなかったトランプ

ニューズウィーク日本版 / 2024年7月3日 15時0分

そんなわけで、バイデンには何度も危ない場面があったにもかかわらず、討論はまがりなりに最後まで進行していったのでした。司会の2人のCNN記者が、極めて公平かつ冷静に、何事もなかったかのように淡々とした進行を心がけていたことも、これを助けていました。

バイデンが絶不調に陥り、何度も危ない場面があったのに、トランプがアドリブで一気にKOを狙うことはしなかった、これには様々な理由が考えられます。直後の印象としては、トランプもまた、陣営のブレーンが「無党派層や穏健派への浸透」を狙って描いたシナリオを消化するのに精一杯だった、そのような感じを受けたのは事実です。

ですが、冷静に考えてみるとトランプ陣営には「深謀遠慮」があったのかもしれません。つまり、相手のバイデンが絶不調に陥った場合に備えて、予め作戦を練っていた可能性です。仮にバイデンが不調になって、沈黙したり、辻褄の合わない場面があったりしても、トランプとしてはそこで「KO」は狙わずに最後まで淡々と討論を続ける、そのような「作戦」がトランプとブレーン達の間で練られていたのかもしれません。

まず、現時点でのトランプの最大のテーマは、無党派層や穏健保守層に浸透することであり、そのためには「お行儀の良い」姿勢は重要です。フラフラになったバイデンをロープに追い詰めるような行為は、これに反してしまいます。

それ以上に、トランプ陣営にはもっと残酷な作戦意図があった可能性もあります。それは相手のバイデンがどんなに不調に陥っても、そこで決定打を浴びせるのではなく、1時間半以上にわたるテレビ討論を淡々と続けることで、有権者に「バイデンの健康問題」をより鮮明に印象付けるという作戦です。

生涯をアメリカ政治に捧げてきたバイデン

そう考えて振り返ってみると、トランプは、この日の討論において、討論自体の否定といった「ちゃぶ台返し」は行わなかったばかりか、司会者の質問に対して珍しく丁寧に答えていました。それもこれも、バイデンの自滅を計算しての行動であったのかもしれません。そう考えなくては納得ができないぐらい、この日の討論は淡々と進行し、最後まで続けられていったのでした。そして、その1時間45分という長い時間をかけて、バイデンとその選挙運動は自滅していったのだと思います。

思えばジョー・バイデンという人は、上院議員として、また副大統領として、そして大統領として、一生をかけてアメリカ社会に身を捧げてきた人物です。そのバイデンに対してこのような過酷な時間を強いたというのは、民主党としても、あるいはバイデン家としても何かが決定的に間違っていたとしか言いようがありません。

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